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No690『国道20号線』~空っぽの心の行き先~

木曜に再見して、書きかけだった感想をまとめたい。

パチンコ屋で、「この台出ない~」とヒサシに甘えた調子で言う
だぶだぶの白いつなぎを着たジュンコ。
あまりに強烈なキャラは忘れがたく
数年前に一度みて以来だったが、すぐ思い出した。

ヒサシとジュンコのだらだらした浮遊感。
パチンコの新装開店で、
二人のどっちが並ぶかを、布団の中で寝ぼけまなこで言い合う。
ローンで大枚借りて、パチンコにつぎ込む生活。
シンナーもする、そんな山梨のアウトローたちの姿は
初見のときは、あまりに自分と違いすぎて、びっくりしたし、
少しひいてしまうところもあった。
(ちゃんと働け~とか、わけわかんないことも思ったり)
今回、そういうところは、あまり気にならなくなった。

まずタイトルの入り方がおもしろい。
一文字ずつ順に、缶ペンキで書いていくのだが、
スプレー缶をいちいち振る音まで、一文字ごとに入り、
最後の、20号線の線のはらいを書いても、
まだ、缶を振っている音が聞こえる。
何を書くのかと思ったら
今度はすごい勢いで、タイトルを消して
画面を真っ黒にしてしまった。なんだか豪快だ。

国道沿いに、ひたすらパチンコとローンの看板が
立ち並ぶ光景は圧巻。
(私も愛知の郊外の出身なので、幹線沿いにパチンコが多いのは同じです)

ヒサシの旧友で、今はやくざで闇金をやっている男が
「パチンコ金融の頃はよかった、
ぺたぺた、ぺたぺた、広告貼ってよ~」と
懐かしそうに言うくだりは、
切なくて、とってもいいシーンだ。

事故で息絶えてしまったジュンコを
ヒサシが原っぱに連れて行くシーンも、
あっけないくらい短く、淡々とした描写。
ジュンコの死は、ヒサシにとって、「悲」なんだけど
それを越えて、どうしようもなく「虚ろ」で「空っぽ」という気がした。

パチンコとローンとの狭間で
うだうだと、自己主張もなく、流されるようにしてやっているうちに
いろいろ巻き込まれて、身動きとれなくなって
どうしようもなくなった、若い奴らの姿を
寄りつ、離れつしながら、撮ったという感じ。

ラストの音楽はやっぱりすごいし、
荒っぽくて、ワイルド。
自分とは遠いように見えた世界も、
最後には、どこか同化してしまいそうな感じで
ラストのモノローグと、バイクを走らせるヒサシの姿に、
力強さと同時に、
彼岸にいってしまいそうな危うさも感じた。

太ったやくざの親分、
ヒサシが持参したメロンを切る、親分の若い女、
ヒサシにバイクを貸すために、ちょっとだけ登場する後輩といい、
なんでこんなに、どの脇役も強烈な印象を残すのだろうと思うほど
どの人物も存在感がある。

ジュンコが、友達の女の子たちと3人、
バーで旧友の噂話をするシーンがある。
これもまた、ため口で
うぜえ、とか、
あいつら(子持ちの友達)こそ、子どもを車中に残したまま、パチンコに熱中して
殺してしまうんだよとか、
すごい悪口ばっかり次から次へと、言いまくる。
言いながらも、一人はバーテンダーに色目もつかっていて、いやらしいのだけれど、
嫌な会話が、なぜか詳細に内容を覚えてしまうほど強烈だった。

ジュンコがシンナー吸いながら、シャブを打ってひきつけを起こすシーンの表情も
すごかった。

帰り、地下鉄の窓から見えた自動販売機や、店の看板のネオンに
なんか同じ世界を感じた。
また機会があれば、ぜひ再見したい。
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