映画の感想をざっくばらんに、パラパラ読めるよう綴っています。最近は映画だけでなく音楽などなど、心に印象に残ったことも。
パラパラ映画手帖
No136「愛についてのキンゼイ・レポート」ビル・コンドン監督
2005-09-09 / 映画
~キンゼイ博士、体当たりの人生~
センセーショナルな話題で一部マスコミに取りあげられていたが、
真面目で、研究心にあふれた動物学者キンゼイの人生に迫った、硬派な力作。
~「キンゼイ・レポート」とは、
50年前、性について語るのもタブーだった、キリスト教社会のアメリカで
1万8千人にセックスについてのインタビューを行い、統計的にまとめて、
48年に「キンゼイ・レポート 男性版」を出版。学術書としては史上初の20万部を売り上げ、大センセーションを巻き起こした。
5年後に「キンゼイ・レポート 女性版」を発表するが、まだ女性の性を受け入れる準備が社会的にできておらず、
非難の集中砲火を浴びて、以後、冷遇される。~
キンゼイは、もともと動物学者で、タマバチの研究家。
学生の要望で開いた「結婚講座」をきっかけに、「ヒト」の性について研究を始める。
インタビューだけでなく、自ら助手ともゲイ・セックスを実験するなど、
どこまでも研究を極めようとしたから、驚きだ。
ある意味、相当の研究オタクといえるだろう。
そんなキンゼイの熱意あふれる姿を、
コンドン監督は、敬意を持って、優しい目線で、丁寧に描いていく。
ファーストシーン。
いきなり、インタビューの仕方を、細部にわたって助手に指導するキンゼイの情熱的な表情を
アップで映し出すところからも、監督の思いが伝わる。
「女性版」の発表後、
研究資金を打ち切られ、「赤狩り」の標的にまでなり、追い込まれていくキンゼイを献身的に支える妻クララの姿に、心暖まる。
最後のインタビューで、老女が、自分の人生について語り、感謝の思いを伝えるシーンは、すばらしい。
キンゼイの偉業を、こんなふうに、一人の人間の言葉として描いたところに、監督の粋を感じる。
映画の最後に、キンゼイ夫婦は森を訪れる。
大地にしっかり根付いた大木を見て、二人が心癒される姿は感慨深い。
最後まで研究への意欲を失わないキンゼイの背中が痛々しい。
キンゼイを演じるリーアム・ニーソン、クララを演じるローラ・リニーとも
この役を引き受けるには、相当の覚悟が要ったと思われるが、見事な熱演だった。
蛇足ながら、
マスコミで騒がれた「問題のシーン」は、講義のスライドとして、画面に登場した。
ちょっとびっくりしたが、医学の教科書の写真のようで、
ここにぼかしを入れるほうが、逆に問題じゃないかと思った。
それよりも、旅先のホテルで、妻と電話で話しているキンゼイが、
全裸になってシャワーを浴びに行く助手クライドを、一瞥するシーンがある。
ここで、映倫は、クライドの「姿」にぼかしを入れた。
キンゼイが、クライドに魅かれ、同性愛を実験しようとするのを暗示する重要なシーンだと思うのだが・・。
満足度 ★★★★★★(星10個で満点)
センセーショナルな話題で一部マスコミに取りあげられていたが、
真面目で、研究心にあふれた動物学者キンゼイの人生に迫った、硬派な力作。
~「キンゼイ・レポート」とは、
50年前、性について語るのもタブーだった、キリスト教社会のアメリカで
1万8千人にセックスについてのインタビューを行い、統計的にまとめて、
48年に「キンゼイ・レポート 男性版」を出版。学術書としては史上初の20万部を売り上げ、大センセーションを巻き起こした。
5年後に「キンゼイ・レポート 女性版」を発表するが、まだ女性の性を受け入れる準備が社会的にできておらず、
非難の集中砲火を浴びて、以後、冷遇される。~
キンゼイは、もともと動物学者で、タマバチの研究家。
学生の要望で開いた「結婚講座」をきっかけに、「ヒト」の性について研究を始める。
インタビューだけでなく、自ら助手ともゲイ・セックスを実験するなど、
どこまでも研究を極めようとしたから、驚きだ。
ある意味、相当の研究オタクといえるだろう。
そんなキンゼイの熱意あふれる姿を、
コンドン監督は、敬意を持って、優しい目線で、丁寧に描いていく。
ファーストシーン。
いきなり、インタビューの仕方を、細部にわたって助手に指導するキンゼイの情熱的な表情を
アップで映し出すところからも、監督の思いが伝わる。
「女性版」の発表後、
研究資金を打ち切られ、「赤狩り」の標的にまでなり、追い込まれていくキンゼイを献身的に支える妻クララの姿に、心暖まる。
最後のインタビューで、老女が、自分の人生について語り、感謝の思いを伝えるシーンは、すばらしい。
キンゼイの偉業を、こんなふうに、一人の人間の言葉として描いたところに、監督の粋を感じる。
映画の最後に、キンゼイ夫婦は森を訪れる。
大地にしっかり根付いた大木を見て、二人が心癒される姿は感慨深い。
最後まで研究への意欲を失わないキンゼイの背中が痛々しい。
キンゼイを演じるリーアム・ニーソン、クララを演じるローラ・リニーとも
この役を引き受けるには、相当の覚悟が要ったと思われるが、見事な熱演だった。
蛇足ながら、
マスコミで騒がれた「問題のシーン」は、講義のスライドとして、画面に登場した。
ちょっとびっくりしたが、医学の教科書の写真のようで、
ここにぼかしを入れるほうが、逆に問題じゃないかと思った。
それよりも、旅先のホテルで、妻と電話で話しているキンゼイが、
全裸になってシャワーを浴びに行く助手クライドを、一瞥するシーンがある。
ここで、映倫は、クライドの「姿」にぼかしを入れた。
キンゼイが、クライドに魅かれ、同性愛を実験しようとするのを暗示する重要なシーンだと思うのだが・・。
満足度 ★★★★★★(星10個で満点)
コメント ( 6 ) | Trackback ( 0 )
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あそこの場面で、ぼかしを入れたら
だめですよね。
ぼかしを入れたことで
キンゼイがなぜ突然ゲイに目覚めたのかが
よくわからなくなりました。
ゲイ・セックスを実験しただけにとどまるらしく、
目覚めたわけでもないようですが、
なにぶん、真実は闇の中ですね。
なるほど・・ゲイに目覚めたわけでは
なかったのですね・・好奇心というか責任感からキンゼイは「実験」してみたというわけですね
何事かを成し遂げるためには、
返り血を浴びてでもっていうか、
自分の身体を張らないとだめってこと
なんでしょうか、やっぱり。
実験せねば、とか、力んだものではなくて、
ただ、ただ、学問として掘り下げたかっただけで、
返り血を浴びても、とか、そこまで覚悟していたかは
わかりません。
「極めたい」という気持ち一筋なんです、きっと。
だとしても、やっぱり
キンゼイにとって
男と交わるのは
相当な勇気と決断が
いったでしょう。
その意味では
相当の覚悟がいったでしょう。
でも、やはり、パラパラフィンさんが
書かれていたように
キンゼイはクラウドに「魅かれて」
いた―だからこそ、「極めたい」という
気持ちが、「実験」という行為に
結びついたのではないでしょうか。
心が動いた、ということなんでしょうか。
映画を見る限りでは、
キンゼイは、クラウドに心が動いていたのは
間違いないですね。
一緒に農作業をしている様子も
とても楽しそうでした。
単に「実験」と割り切れるものでもないですね。