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No1113『ヤンヤン 夏の想い出』~エドワード・ヤン監督の魂に触れたような…~

京都みなみ会館での35ミリフィルムでの上映。
出発の時間が迫る中、急に襲ってきた睡魔を10分の昼寝に抑え、
あわてて家を飛び出る。
勇んだわりに、前半ちらりと再び睡魔に襲われたが、
それ以降ぎゅっと画面にのみこまれるようにして観た。

いいシーンがいっぱい。
エドワード・ヤン監督はもうこの世にいないけれど、
(07年6月29日、59歳の若さで癌のため亡くなる)
こうして、映画という作品を通じて、
監督の魂に触れているような気がして、
監督というより、ひとりの人間として、何を思い、考え、
どう人生に向き合ってきたのか、
そんなことに、映画を通じて、一瞬でも触れたような気がして、
思わず心が熱くなった。

父、母、高校生の娘ティンティン、8歳のヤンヤンと祖母。

映画は、緑あふれる中での結婚式で始まり、
おばあちゃんのお葬式で
家族が見守る中、ヤンヤンが、おばあちゃんの祭壇の前で作文を読み、
「おばあちゃんに会いたい」と締めくくる、その顔で終わる。

『想い出』と邦題にあるように、
父は、偶然初恋の人と再会し、揺れる思いを抱え、
出張先の日本で会う。

ティンティンは、マンションの隣の少女がつきあっているボーイフレンドを
慕っていて、いつも遠目に見つめていた。
その彼が、隣の子とは別れたといい、つきあい始める。ほのかな初恋。

ヤンヤンは、学校の中でも、背の高い、気のきつい女の子に
ことばにならない想いを抱く。
水泳の得意な彼女の真似をして、泳げないのに、プールに飛び込む。

切ないシーンばかりで、身に迫る。
父が、今は人妻で、かつての恋人といっしょにしゃべりながら、
日本の街を歩くシーンが好きだ。
熱海の海もいい。

イッセー尾形がこんなにいいとは思わなかった。
父と、取引のための接待ということで、日本の居酒屋で会う。
トランプを借りてきて、
昔、手品師になりたくて、弟子入りしようとしたけれど、入れてもらえなかった
と話し、カード当てのゲームをしてくれる。
このときの、2人の距離感、親密さが、すごくよくて、
深く心に残るのである。

現実は夢のようにはいかない。
つらいことばかり。
人生にやり直しなんてきくはずもない。
ティンティンのほのかな初恋も、あまりにきつい言葉の暴力に
傷ついて涙するしかない。
それでも、生は続く。
どう向き合ったらいいのか。
観終わって、一気にいろんな感情、
切なさやら寂しさやら悲しさやらが、どっと押し寄せてきた。

その中で、傷ついたティンティンがおばあちゃんの膝の上で
あったかい、と言って眠る。
次の瞬間、彼女の机の上の小さな鉢が映り、
花が咲いたように思えた。
かすかな希望…はあるはず…。

以前、友人にDVDを貸してもらい、
ブログに感想を綴った覚えがあるので、
その感想を読み返してみたら、
なんと、ほとんど同じようなことを書いていた。
今回の発見は、イッセー尾形です。

ヤンヤンが、カメラで写真を撮る。
焼きつけた写真を見ると、人の後ろ頭ばかり。
なんで、後ろ頭ばかり撮るのかと聞かれて、
だって、自分では見れないでしょ、
と当然のように飄々と答えるヤンヤンはすてきだ!
彼のような視線で、歩き方で、世の中に向き合ってみたい。

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