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No484『ラブン』~闇の怖さ~

前回の特集で、いまひとつ不消化だったというか、
1回観たきりで、少し眠かったような記憶がある本作は、
オーキッドの両親を中心に描いた作品。

監督のデビュー作なのだが、
これがなかなか、わからないながらもおもしろい。
登場人物の登場の仕方も、画面オフで、声だけ聞こえたり、
気をつけていないと、誰が誰だかわからなくなってしまう。
それでも、いろいろに想像できる魅力に満ちている。

冒頭のシーン。石をぶつけて缶を倒すような遊びを
缶をアップに、スクリーンの真ん中に、上から撮る。
人物は写らない。
画面外から少年の声がして
四方八方、あちこちから順に石がとんでくるが、なかなか缶は倒れない。
「オーキッドの母が来たよ」「目をつぶって投げても当たるんだ」と
少年達の小声の会話が聞こえてくる。
しばし画面の動きがなくなり、静寂・・。
一体どこから、石が飛んでくるのか、どきどきしていると
ひゅっと右の方から石が飛んできて缶が倒れ、タイトルロールが始まる。
このおもしろさ。
この母の設定は、映画への伏線となるし、
この遊びは、映画の最後へとつながる。

監督は、映像としておもしろがらせることを知っている人だ。
そして、世の中には悪意が存在し、
ねたみも、いやがらせもあること。
そういう人がいることを、きっちり描きつつ、
それを乗り越え、受け入れていく人の姿を描いている。
力むことなく、さりげない、自然なたたずまいにひかれる。
なんと達観した人だろう、
この作品を観ても心底、痛感した。
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