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No1405『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』~子どもたちのあふれるパワーと繊細な表情を掬い取る~

目の前に洗濯物の山。
窓の外には、ほんのりピンクに染まった空。
週末のお天気の一日も、こうして過ぎていくのだなあと
秋の心地よい、ひんやりとした空気の中で思う。

自分というフィルターを通り過ぎてゆく
よしなしごと。
小説やエッセイや音楽や映画と出会ったときの
しんとした心を伝えたい。

フロリダのディズニー・ワールドの近くにある
安モーテル群が舞台。
観光客だけでなく、
低所得で、定住できず、その日暮らしの人々の
住みかにもなっている。

子どもたちがとにかく元気で、
素直でまっすぐな表情を切り取っている。

冒頭、男の子が「ムーニー!」「スクーティ!」と呼びながら
懸命に走っていく。
建物の影に座りこんでいる6歳の少女ムーニーと少年スクーティが
応答して叫ぶ姿を交互に映し出す。

主人公は6歳のムーニー。
同じモーテルや隣のモーテルに住む友達とつるんでは、
いたずらを繰り返し、天真爛漫。

15歳で彼女を産んだ若い母ヘイリーは、無職で、
ホテルで、観光客相手に、香水を売りつけたり、
盗みをしたり、かなりきわどいことをやっている。

無茶苦茶なこともするけど、
必死さと辛さがにじみ出す。
娘を愛し、子どもたちを可愛がっていて、
子どもたちといるときの笑顔がいいから許せる。

スクーティが、自分のやったいたずらが度をこしたことに気が付き、
親にもいえず、ふさぎこんで、じっとテレビを見ている表情。
ムーニーが最後にジャンシーに会って、思わず泣きだす顔。
それまで、ずっとムーニーの後ろをついていくだけだった
おとなしくて内気なジャンシーが、そのとき、初めて、
「行こう!」と言って、ムーニーの手をとり、
自ら駆け出すときの、ジャンシーの決然とした表情。
そんな子どもたちの忘れられない表情がいっぱい。

モーテルの屋外に面した廊下を、子どもたちが何十mも、
端から端まで走っていくのを、
外からずっと横移動でとらえたカメラもよかった。

好き放題にいたずらを繰り返し、
困ったことばかりしでかす。
そんな「あかん子」たちを、
叱ったり、怒ったりしながら、
あたたかく見守るのが、モーテルの管理人ボビー。

高いハシゴにのぼって、建物のペンキの塗り替えをしている時に、
子どもたちに話しかける不審者を見つけて、
あわててバケツを落っことして、注意しにいく。
いつも無愛想だけど、愛すべき管理人。

困り果てたヘイリーを黙って抱きしめて、大丈夫とささやく
ランドリーで、タオルやティッシュを快く貸してくれる女性。
大人の人間模様でもある。

親友のジャンシーのお誕生日祝いをするのに、
ムーニーと3人で、川べりにいって、川の向こうに見える
ディズニー・ワールドの花火を見て、
お誕生日祝いするシーンや、
ムーニーとジャンシーが見つけた、
モーテルの上にできた大きな虹の美しいこと。

つらい現実の中で、たくましく生きる子どもたちのパワーが全開。

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