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No1421-3『幸福なラザロ』~ひとつの大切な寓話~

ラザロが笑った。
ラザロがほほ笑んだ。
ラザロが黙った。
ラザロがつっ立っている。
ラザロの頬を涙がつたう。

この映画を観て、ふと臨床心理学者の河合隼雄さんのことを思い出した。
河合さんなら、どう感じるだろう。

映画は、現実とは違っていて、
とても神秘的なことが起こる。
現実ではありえないこと。
でも、心の中では、こんなことが
よく起きているような気がします。

ラザロは、自分を主張しない。
いつも自分のことは一番最後で、人に譲り、
自分は、人一番働く。
人のことを信じ、
人を喜ばせることを、自分の喜びとし、
人の悲しみを、自分の悲しみとする。
その純粋な眼に、目の前の世界は、人々は、
どんなふうに写っていたのだろう。

この映画の中で、象徴的なシーンは、
ラザロが、荒涼とした砂漠のような土地を歩いているところ。
一人で。
あるいは、
兄弟と信じた青年と。

生と死の間の一本道。
時が止まったような場所。
分け入っても、分け入っても‥

ムンクの絵のような。
現実と幻想が溶けいるような世界を思い出す。

そのとき流れるバッハの音楽を聴くと、
人生を思う。
ひとり、どこまでも、一本道を歩いてゆく。

やはり、この映画の魅力は、
ラザロが立ち尽くしているそのたたずまい。

どの小説にもある、時が止まる瞬間。

おじさんのことりが窓から外に飛び出した瞬間。

あ、永遠。

この映画にも、そんな瞬間が幾つもあるような気がする。

さみしいことがあって、
どう受け入れたらいいか考えている。
でも、このタイミングで、この映画に出会えたことを感謝したい。
ラザロを私の中の大切な人としたい。

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