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平成という時代に残る、こころあたたまる小説「ことり」

映画に行くつもりが、結局、家から出ないまま、
今日という日が終わりました。
あらためて、小川洋子さんの「ことり」という小説について書かれた
エッセイ記事を読み直して、1年前に自分が書いた感想を再読し、
足りないところも含めて、まとめ直してみました。
 
言葉が話せないけれど、
小鳥のさえずりは理解できるお兄さんと生きた、
「小鳥の小父さん」が主人公のおはなしです。
   
小父さんは、建物の管理人という地味な仕事を
とても丁寧に、心をこめてします。
お兄さんが亡くなり、
小父さんは、幼稚園の小鳥小屋の掃除を始めます。
小鳥たちのために精魂かけて…。
それは、小父さんにとって、とても自然なことで、
ただもう小鳥たちのために、当たり前のことをしている、
そういう感じ。
 
他人からどう見えても、
小父さんは、小父さんのこころの物差しにしたがい、
丁寧に、大切に日々を過ごしている。
そういう小父さんのことを、
作者は、とても滋味深く、愛情をこめて描いていて、
この落ち着いた語り口が、心に残ります。
  
映画でも小説でも、哀しくても、
ほのかな希望を見出すことができるとほっとします。
おじさんの心の中には、
ずっとお兄さんとの思い出があって、
大切な小鳥がいて、
おじさんは、傍目には孤独なひとり者に見えても、
心の中は、決してそうじゃなかったと思えるのです。

その人、その人、それぞれに
こころのものさしがあって、
それぞれに大切なものを心に抱いて生きていたら、
それでいい、そう思えます。
 
1年前、書評に魅かれて読んだ小説で、
今日、思い出すことができてよかったと思います。
私は読むのが遅くて、随分かかりましたが、
この小説をちびちびと読んでいる時間は、
とても静謐な世界が広がっていて、
こころが安らぎました。

もし、いつか、本屋で、この本を目にしたら、
ぜひ手に取ってもらえたら、うれしいです。

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