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No183「男たちの大和/YAMATO」佐藤純彌監督

~生き残った意味を見つけるまで~
一台の空軍の援護もなく、沖縄へ向かう途中、米軍の猛攻撃を受ける大和。
渡哲也演じる司令長官の「一億玉砕の象徴」という言葉がよみがえる
映画は、この最後の戦闘シーンを、延々とうつしだす。
目を覆いたくなるほど、悲惨な光景の連続。
主砲も副砲も、人間の手で一つ一つ砲弾を運んで、込める作業を伴うもので、
機銃も、弾倉をこめて、角度を調整して、撃つ、と
リアルな描写が続く。すごい迫力だ。
中村獅童と反町隆史の演技にも熱がこもる。
しかし、作品全体としてみた時、どうも何かが足りないような気がした。
違和感のようなもの。

犬死にすることに疑問を持った兵隊の姿も描かれ、
息子に帰ってこい、と言う母もいた。
「戦争で死ぬな」というメッセージが何度も繰り返される。
一方、仲間を見捨てず、運命を共にしようとする者もいた。

しかし、どうもまっすぐ心に響いてこない。
こういうシーンを描きたい、というのが先にあって、
そのエピソードを並べていった印象も受けた。
登場人物が多すぎて、焦点が分散してしまったような気がする。

最も印象に残ったのが、年少兵の神尾が死んだ戦友、西の故郷を訪ね、
西の母(余貴美子)に会ったときに言われた言葉。
「なんで帰ってきたん」
どすのきいた余の声が、お腹にぐっと迫ってきた。
こんな一言でいいのだ。
息子を喪った母の悲しみの深さも、
戦争で生き残った者の傷の深さも
この一言で、深く、痛いほど伝わった。

ラストの神尾(仲代達也)と内田の娘(鈴木京香)の乗る飛鳥丸のシーンもよかった。
少年が舟に同乗していることからも、明日に向けてのメッセージが伝わる。
やっと生き残った意味がわかった、という神尾の言葉の意味の深さ。

年少兵、神尾の同級生役の蒼井優がちゃきちゃきした、
笑顔がとってもかわいい少女を好演。

反町が演じるのが、兵員たちの飯を炊く烹炊所(ほうすいしょ)の班長と、
あまりスポットのあたらない仕事に着目したところは興味をひいた。
原作の辺見じゅんが、大和の生き残りの方々にインタビューしたという話を
読んでみたいと思った。

満足度 ★★1/2(星5個で満点)
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