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No1055『GF*BF』~君の笑顔が輝かしいほど、切ない想いが心にしみる~  

描かれなかった歳月の重みが
最後のエンディングロールになって、ずんずん心に押し寄せてきた。
その人が抱えていたいろんな思い、切なさ、悲しみ、深い愛が、
映画が終わってみて、どっと押し寄せてくる…。
そんな映画が、私にとってのいい映画なのかな、と思った。

アジアン映画祭の1本。
台湾映画で、ヤン・ヤーチェ(楊雅)監督。2012年。原題は『女朋友。男朋友』。

冒頭、女子高の朝礼で、女の子たちが、
スカートでなくズボンをはきたいと言って、
皆で一斉に、ズボンを下にはいておいて、スカートを一斉に脱ぎ捨てるところから始まる。
計画した姉妹が、校長室に呼ばれ、父兄らしき男性が現れる。
姉妹は父と呼んでいるが、実は彼は事情があって兄ということになっていて、
でも、私は父なんです、と力強く言うシーンで、タイトルイン。

1985年の戒厳令下の台湾から映画は始まる。
冒頭、夜、ヘッドライトをつけて、木の上にのぼって、
何か香りのする花を摘み取る仕事をしている3人の姿。
このシーンがすごくいい。

男子2&女子1人の仲良し高校生の
ライアム、アーロンとメイベル。
高雄の高校では、規則が厳しい中、発禁本を売ったり、自由奔放に生き、
アーロンとメイベルがつきあい始める。
大學時代には、学生運動が盛んで、
そうして、働き始め、3人が再会して、と30年近いスパンで追っていく。

メイベルを演じるグイ・ルンメイは、
勝気で、大胆で、ぐいぐい男の子を引っ張っていく子でありながら、
傷つきやすく、ナイーブ。
ルンメイの繊細な演技は、観る者をぎゅっとひきつける。

そんな彼女をじっと見守り、寄り添うライアム役のジョセフ・チャンが、いい男ぶりを発揮。
肩にもたれるだけで、あったかい感じがする。
アーロンを演じるのは、英台ハーフのリディアン・ヴォーンで、
キュートで、自由奔放なエネルギーを放つ。

3人が高雄で、川で泳いだり、バイクで山を走ったりする姿がすばらしい。
実はライアムは、ホモセクシュアルで、アーロンに魅かれていたり、
三角関係は複雑だが、三人の友情の強さは本物。

「あたたかい光をくれた人
あたたかい夢をくれた人
そっと遠くからあなたのことを想いつづけよう」
「涙の帰る場所」

と、最後に流れる歌に涙が止まらない。

メイベルは、アーロンを想っていながら、
ほかの女の子と相思相愛と知り、身をひく。
結婚後も、不倫を続けてしまう、彼女の弱さ。

人が寄り添ってくれることのあたたかみが、切なくもじんわり伝わってくる。
人はさびしい生き物で、
想いはかなえられず、すれちがい、涙は時間とともに乾いていく。

エスカレータの上に置かれたチケットは静かに下っていく。

3人のうち一人でも幸せになれたら、それでいいという
ライアムの言葉が心にしみる。
彼もまた、つらい思いを抱えて生きていた。

グイ・ルンメイの笑顔が、はじけるほどに明るく、輝かしいほどに、
切ない運命が、悲しく心に響いてくる。

飛行場の後、わずかな、でも要となるシーンを除いては、大胆に省略して、
現代につながってくる潔さ。
その間の描かれなかった歳月の間に起こった出来事、
ライアムの思いを、思うだけで、なんだか、涙があふれてくる。
ぜひぜひ一般公開を待ち望む作品。

予告(台湾版)観れます。

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