日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

東電破たん処理決断で、大飯原発再稼動に待ったを!

2012-04-13 | ニュース雑感
前回の続き的にもう一丁です。

大飯原発の再稼働決定を急ぐ政府。今世間で問題になっているのは、「安全性の確保」に確証が持てない状況下でなぜ再稼働を急ぐのか、です。前回エントリーで申し上げたように、「再稼働」に関しては票勘定にも直結する諸々の既得権者とのしがらみがあることは明白。これは時間をかけてシロアリ”退治をしていくほかにないのでしょう。ただ「急ぐ」という点に絞りその理由を正すことに関しては、“シロアリ”になし崩し的に逃げ道を作らせないためにも、今問題視することの優先順位はもっとも高いと思います。

なぜ急ぐのか。この夏の関西電力の電力供給が不足するとされるからというのがその最大の理由ですが、他社融通などを最大限考慮することで実際には問題ないと言う意見も多々聞かれています。それが現状確実性のあるものであるか否かは分かりませんが、国民の安全性の確保という問題は何をおいても最優先で考えられるべきものであり、専門家をしても安全性の確保に確証が持てない現状では、原発はなきものとしていかに夏を乗り切るかの方策を考えるのが筋であり、政府も関西電力もいっぱしの大人であるならその程度の判断は容易につくはずなのです。

なのに再稼動を急ぐ、どうみても急ぎ過ぎというのはおかしいわけです。そこで「急ぐ」のには別の“大人の理由”があるはずだ、ということで考えられるのが前回エントリーで申し上げた「東電再建計画の前提条件となる原発再稼動の必要性」です。要するに、官僚・民間問わぬ“シロアリ”軍団に囲まれた政府は、自己の利益を優先しなんとしても東電を破たんさせずに再建させなくてはならないという“不退転の決意”に至っているわけです。そのためには、再建計画の提出が迫る中、急いで原発再稼働の既成事実を作り上げておかなくてはいけない、という図式になるのです。

となれば安全性の確保が間々ならない状況下で、原発の再稼動を思いとどまらせる方法はただ一つ。政府が今このタイミングでこそ、東電の破たん処理を決断すること以外にありません。この問題は何度となく当ブログのエントリーでも申し上げてきました。実質破たん状況にある民間上場企業を株主責任も貸し手責任も問うことなく、政府の手によって再建支援をするということは著しく市場原理を損なうことであります。さらにフリー・フェア・グローバルを旨とする国際社会のルールから見れば、至ってアンフェアなこのやり方は我が国の国際信用力さえも損なうことになると思うのです。

株主であり貸し手である公共性を帯びた大銀行団は、政府の資本注入を前提として利用者に対する背反行為ともとれる追加融資をおこない、経団連会長は東電は民間活力を損なわないためにも政府が経営関与せずに再建支援すべきであるなどとのたまう。結局、政府の保護下にある日本古来の独占的電力ビジネススキームに群がる“シロアリ”軍団が織りなす茶番劇に無責任政府が踊らされ、国民生活の安全性が脅かされる状況になるつつあるわけです。もう一度申し上げます。諸悪の根源は既得権者だけが守られる東電の延命策です。

国民の目を巧みに欺きつつ、ずるずると行きかけた東電の政府による再建支援。大飯原発再稼動を不自然に急ぐというリスク行為としてその悪影響が表面化した今こそ、政府の責任において被災者保護を法的にカバーした上での破たん処理、分割売却、発電・送電分離等による我が国電力事業の再構築を決断すべきであると思います。まずやるべきは、東電破たん処理への着手です。政府は国民生活を守るのか、それとも既得権者のみを守るのか、すべてはこの決断で明らかになるでしょう。メディア各社も、今こそ政府に決断を迫るべくこの問題を力強く論じるべき時であると思います。