日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

「iTunesストアでビートルズ配信スタート」が示唆する電子書籍ビジネスの雌雄

2010-11-17 | ビジネス
本日午前0時にアップル・コンピュータから、「ビートルズ楽曲のiTunesでの配信開始」のニュースが発表されました。

このニュースが一般ニュースとして(音楽ニュースとしてではなく)どれほどのニュースバリューがあるのか、正しく理解するには多少の予備知識が必要であります。その予備知識とは、アップル・コンピュータとビートルズの楽曲を管理するアップル・クロップスとの長年の確執問題です。アップル・コンピュータは、CEOのスティーブ・ジョブズ氏がビートルズが独自に作り上げたレーベル兼ビジネス・カンパニーであるアップルに敬意を表して名付けたと言われています。しかしながら、70年代後半にアップル・コンピュータが有名になってくると、“本家”アップルとの間で商標権を巡っての裁判や音楽ビジネスへの進出を巡ってのトラブルなどが長きにわたって繰り広げられてきたのです。この一連の争いは、07年に一応の決着をみてはいるものの、お互い“いわく付”の仲であったと言ってもいい関係ではあるのです。

それが、音楽ファンならずとも大注目のビートルズ楽曲データの初ダウンロード販売の取り扱いをその“いわく付”の相手アップル・コンピュータに真っ先に認可したと言うこの事実は、音楽ダウンロード販売サイトとしてのiTunes Storeの圧倒的な利用者からの支持を改めて示したことになると思います。しかも、販売方式は楽曲ごとの“バラ売り”あり&1曲200円設定というある意味アップル・コンピュータの“言いなり条件”でのスタートな訳で、この点からも市場における「アップル強し!」の感を印象付けられるものでありました。何よりリアルおよびネット上でのCD販売店にとっては、大変ショッキングな出来事でしょう。昨年のビートルズ・リマスターBOXや今年の「赤盤」「青盤」等は、ヒット作欠乏状態の音楽ソフト販売業界において、確実にヒットが見込める数少ないアイテムな訳ですから。これがネットで安価に、かつ手軽にダウンロードできるようになるというのは、販売店にとっては実に困った話に相違ないのです。

これは来るべき電子書籍ダウンロード販売の本格到来時の業界内力関係を、予感させるに十分すぎる出来事ではないでしょうか。人気書籍の電子化と安価バラ売りビジネス化を想像するに、リアル&バーチャルの紙書籍販売店は寒気する思いかもしれません。このままでいくと電子書籍ダウンロード販売ビジネスもアップル・コンピュータiTunes Storeの一人勝ちになってしまうのか、利用者目線で一体どんな魅力的な販売方法をくりだしていくるのか等々、ビートルズ争奪戦を制したアップル・コンピュータの今後の電子書籍販売戦略に興味は尽きません。