日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

店主の心遣いにビジネスの基本を再認識

2010-11-30 | 経営
11月も今日でおしまい。いよいよ今年もあと1カ月です。この歳になると、あまりの月日の流れの速さにはホント嫌になります。12月は忘年会シーズン。サラリーマン時代に比べて、グッと忘年会の数も減っていまして、さらに自分が場所予約をする忘年会となると今はほとんどないのですが、たまに機会があるならお気に入りのお店でと思うわけです。そこで今年の数少ないそんな機会に魚のおいしいお気に入りの店でと、昨日予約の電話を入れてみました。忘年会の日程は12月後半なのですが、知る人ぞ知る“不況知らず”の人気店なので早めに動いてみたわけなのです。

そのお店は私よりも少しだけ年配とおぼしき店主を中心として、若い衆が6~7人で店の切り盛りをしているのですが、昨夜私が電話を入れますと電話を取られたのはどうやらその店の店主のようでした。予約の日時・人数を伝えOKをいただいて、予約の名前を告げた時です。「あ、大関様、埼玉の方の方でしたね。いつもありがとうございます」と思いがけない一言が。確かに初めてうかがった際に名刺はお渡ししましたしその後もここ数年間でこのお店には数回足を運んでもいますが、ここ1年以上は全くご無沙汰で本当に久しぶりに電話をしてみたという状況なのです。店に行って顔を見れば名前は分からなくとも、「あー、久しぶりですね。いつもありがとうございます」ぐらいのご挨拶はいただけるのかもしれませんが、顔が見えない電話で名を名乗っただけで常連でもない客のパーソナリティが浮かぶと言うのは、まさにサービス業のプロのなせる業です。感心しきりで、思わず「すいません、すっかりご無沙汰しまして」という言葉が口をついて出ていました。「客に恐縮させる」、これぞサービスの極意なのです。

そうやって思い起こしてみると、このお店確かに電話が鳴ると手を止めていつも真っ先に店主が電話をとっていたのを思い出しました。なるほど、店舗に入る電話と言えばお客さまからのものが大半な訳で、来店と同様お客さまとの接点としての電話は大変重要なポイントを握っているのです。ここで気がつかなくてはいけないこと。大企業などではその昔は、お客さまからの電話の応対に好感度を高めようと各社電話交換手を雇って応対印象向上に努めていました(最近では、バブル崩壊以降の不況時の経費削減等の折に真っ先にリストラの対象とされ、電話はダイヤルイン方式で各部門が直接応対する形に変わってきました)。中小企業はこれを見て「電話は女性や下っ端がとるもの」と勘違いしたのか、どうも電話応対は「本業外」の印象が強く若手やパート、アルバイトが勢い電話担当になりがちで、電話が鳴っていると「早く取れ!」と上席は偉そうに構えていると言う絵が浮かんでくるように思います(もちろんビジネスマナー上、電話応対は全スタッフに重要な基本項目ではありますが)。

大企業はともかく、電話は中小会社やお店においては確実に“顔”であり、お客さまにその会社を印象付ける一番の接点でもあるのです。それを年端もいかない下っ端や正社員ではないパート・アルバイトに任せっきりでいいのでしょうか。時には管理者が率先して電話を取るあるいは店主や社長が率先して電話を取る、「株式会社××、社長の○○です」と電話に出てきたら、ビックリしますよね。「あれ、社長さんがなんで?」と言われたら、「当社はお客さまを経営者自らが率先してお迎えしなくてはいけないと思っておりますので」とでも受け答えするなら、お金のかからないこれ以上のイメージアップ策はないと思います(私も銀行の支店長時代に電話をとって名乗ったら、「支店長が真っ先に電話を取るのか、すばらしい会社だね」とおほめいただいたことがあります)。お客さま対応の総責任者は経営者に相違なく、その第一接点を経営者自らが大切にする気持ちを持ち行動することが社内にもその考え方を浸透させ、なによりお客さまの高感度を高めることにつながるのであると、件のお店の店主はいみじくもお教えてくれているのです。

どこの世界でも、お客さまあってのビジネスです。“不況知らず”の人気店店主のこんな隠れた努力には学ぶ点が大いにあると思います。