静聴雨読

歴史文化を読み解く

中国の憂鬱

2010-11-17 06:41:11 | 歴史文化論の試み
APECが閉幕した。そこに集った各国首脳の中で、中国の胡錦濤国家主席の表情が硬く、その挙措動作があたかもロボットのように見えた。ここに中国の置かれた現在の立場が現われている。

中国は、日本との間に尖閣諸島の領土紛争を抱えているのみならず、同じように南シナ海で、ベトナム・インドネシア・フィリピンなどの国々の漁船を拿捕したりして、物議を醸している。また、領土紛争にからめて、レアアースの輸出制限措置を発動して、全世界の批判を浴びるに至った。

本当に中国と付き合っていて大丈夫か、と思う人が増えている。

中国を理解するためには、その歴史を振り返る必要があろう。

第一に、清朝までの王朝が育んだ「中華思想」がある。中国優越思想だ。この残渣が現代まで尾を引いている。

第二に、アヘン戦争に象徴されるように、十九世紀の欧州・米国・日本の植民地主義に蹂躙された苦い記憶が中国にはある。ナショナリズムを長い間鬱屈させてきたのだ。

第三に、中華人民共和国の成立に伴い、共産党主導国家として現在に至っている。国民を掌握すべきだというプレッシャーに縛られている。

そして、第四に、近年の急速な経済成長とそれに伴う格差の拡大が挙げられる。経済大国への変貌に、国家としての品格や国民性の成熟が追いつかなくなっているのだろう。

このように、中国の歴史的経験を振り返ると、現在の中国が、国権と民権の相克、排外的対外観との格闘、その中での民心掌握への腐心などに翻弄されているのがよくわかる。胡錦濤主席の硬い表情からそのようなことが窺えた。 (2010/11)


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