静聴雨読

歴史文化を読み解く

記憶のよみがえり現象・1

2009-03-14 13:38:59 | 歴史文化論の試み
(1)「記憶」の構造

いきなりだが、「記憶」について、述べてみたいと思う。記憶がどのような構造をしているのか、また、その記憶の「よみがえり」はどのように起こるのか、などについて、私の関心のある様々な分野で検証してみたい。

「記憶」についての本格的研究は、哲学・心理学・大脳生理学の専門家にまかせるよりほかないが、身の回りにも、「記憶」をめぐる不思議な事象がいろいろとある。

平たくいえば、記憶は過去の事象に関する経験・体験を大脳に刻みつけたものだから、経験・体験の量が多くなれば、すなわち、加齢が進めば、脳内におけるそれらの整理が進むのだと推測できる。

膨大な過去の経験・体験の「整理」は、一つは、それらの一部分の「忘却」となって表われ、もう一つは、それらの「圧縮」となって表われるのではないか、というのが私の試論である。

「忘却」については、戸井田道三『忘れの構造』、1984年、筑摩書房、が参考になる。この点は後に述べることにしたい。

過去の経験・体験の「圧縮」とは、記憶容量の限界などの理由により、必要に迫られて、膨大な経験・体験を押しつぶすことだ。卑近な例を引けば、かさばる段ボールを圧縮して紙のブロックを生成するのに似ていようか。紙のブロックから個々の段ボールの属性を推測することは難しいが、個々の段ボールの属性がまったく失われたわけではない。過去の経験・体験は「圧縮」されて、「仮死状態」に置かれているといえばわかりやすいだろうか。  (つづく。2009/3)


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