アイヌ民族情報センター活動日誌

日本キリスト教団北海教区アイヌ民族情報センターの活動日誌
1996年設立 

遺骨の研究なくしてアイヌが先住民族であることは明らかにならない?

2014-12-31 10:55:55 | 日記
北大開示文書研究会は2014年11月25日付で内閣官房アイヌ政策推進室長宛に要望書「アイヌ遺骨返還政策にアイヌの意見を反映させてください」を送りました。全文を「さまよえる遺骨たちBlog」にUPしています。
http://hokudai-monjyo.cocolog-nifty.com/blog/2014/11/post-6e54.html#comment-111323639

北大開示文書研究会HPの資料集(http://hmjk.world.coocan.jp/archives.html)に集めてあるように、くり返して要望や質問を続けていますが、何の応答もありません。一切ないのです。

過去Blogで先住民族のアイデンティティと構成員決定の権利について書きました。
http://blog.goo.ne.jp/ororon63/e/bbb8f67525b860129ed2555a3fbef4d0
重複しますが、『アイヌ政策のあり方に関する有識者懇談会報告』(以下、『報告書』)の中の、先住民族の定義とアイヌ民族が日本の先住民族であることを述べている下りを引用します。

先住民族の定義については国際的に様々な議論があり、定義そのものも先住民族自身が定めるべきであるという議論もあるが、国としての政策展開との関係において必要な限りで定義を試みると、先住民族とは、一地域に、歴史的に国家の統治が及ぶ前から、国家を構成する多数民族と異なる文化とアイデンティティを持つ民族として居住し、その後、その意に関わらずこの多数民族の支配を受けながらも、なお独自の文化とアイデンティティを喪失することなく同地域に居住している民族である、ということができよう。
「1 今に至る歴史的経緯」で見たように、アイヌの人々は、独自の文化を持ち、他からの支配・制約などを受けない自律的な集団として我が国の統治が及ぶ前から日本列島北部周辺、とりわけ北海道に居住していた。その後、我が国が近代国家を形成する過程で、アイヌの人々は、その意に関わらず支配を受け、国による土地政策や同化政策などの結果、自然とのつながりが分断されて生活の糧を得る場を狭められ貧窮していくとともに、独自の文化の伝承が困難となり、その伝統と文化に深刻な打撃を受けた。しかし、アイヌの人々は、今日においても、アイヌとしてのアイデンティティや独自の文化を失うことなく、これを復興させる意思を持ち続け、北海道を中心とする地域に居住している。これらのことから、アイヌの人々は日本列島北部周辺、とりわけ北海道の先住民族であると考えることができる。 (3 今後のアイヌ政策のあり方 (1) 今後のアイヌ政策の基本的考え方 1 先住民族という認識に基づく政策展開 ア 先住民族であることの確認 b アイヌの人々が先住民族であるということ)


アイヌが先住民族であることは、
①アイヌが自立的な集団として居住していた 
②日本によって支配された 
③にもかかわらず独自のアイデンティティを持ちつつ居住している

からだと説明されています。

最近、「アイヌ民族の遺骨の研究なしにアイヌが先住民族であることは明らかにならない」という考えを耳にしたり読んだりしますが、問題のすり替えであることをわたしの仲間とのやり取りで気付かせて頂きました。「先住民族」とは、植民地化や侵略の時点で先住していた民族が支配を受けつつも独自性を持ち続けて来た人々であり、人骨研究や起源研究とは関係がないのです。先住性を民族の起源にさかのぼる問題のごとく説明し、人骨研究の必要性を解くと言うのはおかしいのです。

さて、北大開示文書研究会主催の出前講座「アイヌの遺骨はアイヌのもとへ」 in 浦幌は、さる10月11日(土)に浦幌町商工会コスミックホールを会場に開催され、多くの方においで頂きました。
講演者の講演および、質疑をブログ「さまよえる遺骨たち」にて、音声で聞く事が出来ます(ちなみに、司会はわたくし)。
http://hokudai-monjyo.cocolog-nifty.com/blog/


次回の「アイヌの遺骨はアイヌのもとへ」 in 東京 のご案内です。
詳しくはブログ「さまよえる遺骨たち」で、ご覧頂けますし、チラシもダウンロードできます。参加費500円。申込み不要。

日時:2015年1月30日(金曜)午後6時~8時50分
会場:平和と労働センター・全労連会館(東京都文京区)

プログラム
・アイヌ遺骨返還訴訟原告からのメッセージ  
差間正樹さん(浦幌アイヌ協会会長)
・講演1「アイヌ民族の遺骨を欲しがる研究者」  
植木哲也さん(苫小牧駒澤大学国際文化学部教授、『学問の暴力 アイヌ墓地はなぜあばかれたか』著者)
・講演2「アイヌ民族の先住権を認めたくない政府」  
榎森進さん(東北学院大学名誉教授、『アイヌ民族の歴史』著者)
・講演3「先住権・憲法から解きほぐす遺骨返還」  
市川守弘さん(アイヌ遺骨返還訴訟弁護団)
・他


 2014年も終わります。この一年も、多くの方にお世話になりました。ありがとうございました。活動日誌Blogの引っ越し後、今までと勝手が違い、記事や写真のアップが面倒になったことや、忙しさもあって更新が滞ってしまいました。連日、「先住民族関連報道Blog」は、頑張って更新を続け、小さいですが写真も掲載出来るようになりました。
新年もよろしくお願いいたします。


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