たいへんご無沙汰しておりました。北大開示文書研究会より新刊『アイヌの権利とは何か 新法・象徴空間・東京五輪と先住民族』が出ましたのでご紹介します。
第1部は開示研メンバーでもあるオーストラリア国立大学名誉教授のテッサ・モーリス=スズキ氏の論考(1章:演出された民族共生 2章:世界の先住民族とアイヌ 3章:「共生の五輪」と先住権)、第2部には、アイヌのみなさんからの声(葛野次雄/楢木貴美子/差間正樹各氏)と、アイヌ遺骨返還裁判の原告代理人である市川守弘弁護士によるアイヌ民族の先住権についての論考(アイヌ先住権の本質)、はじめの挨拶と結びは開示研共同代表の殿平善彦さん、清水裕二さんが書かれています。
第1章のテッサさんの論文は、このブログの過去記事(2019/03/20~03/22)に掲載した、さる2019年3月9日に行われた「アイヌ先住権をめぐる連続出前講座18−19」のテッサさんの講演内容と重なりますので、あらためてご紹介します(下記事)
・テッサ・モーリス=スズキ氏による講演「世界の先住権の常識で再考するアイヌ政策」
https://blog.goo.ne.jp/ororon63/e/614f450d3246a56344ef570a1489e170
・テッサ・モーリス=スズキ氏による講演「世界の先住権の常識で再考するアイヌ政策」続き
https://blog.goo.ne.jp/ororon63/e/215873356ae99114e342a52801100b0e
コロナ禍で、開館が数回延期されたウポポイ(民族象徴空間)が、いよいよ7月12日に決定しました。日本初の国立アイヌ民族博物館ができ、期待も多いところです。しかし、世界の先住民族の権利回復の動きに対して日本の先住民族アイヌへの対応は問題だらけであることが指摘されています。
3章「『共生の五輪』と先住権」には、共生が主張されながら、実は「調和」のほうが強調され、「多様性」への理解は、食品、衣装、儀式、祭りといった「うわべだけの多文化主義」に限定されてしまい、マイノリティの法的権利の保障にはつながっていないと指摘。そしてこのことはアイヌ社会にとってとりわけ重要な問題だ、と。
第2部には、葛野次雄さんによる「静内アイヌ協会」設立の経緯、楢木貴美子さんはご自身の体験を樺太アイヌの戦後というかたちで書かれ、差間正樹さんは遺骨返還を実現したこと、さらに先住権として鮭漁の権利を訴える闘いを準備していることが記されています。
市川弁護士は2019年4月に公布された「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(以下、「施策推進法」)の問題点を法律家の立場から分かりやすく説明します。アイヌ遺骨をめぐる施策推進法の問題点、先住権や自己決定権とはなにか、そしてその根拠など納得がいきます。
清水裕二さんのむすびのことばには、ご自身の差別体験が綴られ、アイヌ民族についての教育の必要性が述べられています。
資料編には、関連年表(遺骨返還裁判に詳しい)、そして、「先住民族の権利に関する国際連合宣言」(2007/9/13)、「施策推進法」全文がついています。
どうぞ、お手にとってお読みください。
『アイヌの権利とは何か 新法・象徴空間・東京五輪と先住民族』
テッサ・モーリス=スズキ/市川守弘/葛野次雄/楢木貴美子/差間正樹/殿平善彦/清水裕二:著
北大開示文書研究会:編 四六判200頁
かもがわ出版 2,200円(税込)+送料(180円)
ISBN 978-4-7803-1100-6 C0031
購入方法は
1.下記の振替口座に本の送付先を記入してご入金ください。確認次第お送りいたします。複数冊のご注文、その他のお問い合わせは事務局のメールでお問い合わせください。
1冊2200円 (税込定価2200円+スマートレター180円)
ゆうちょ銀行 振替口座:02790-1-101119 口座名:北大開示文書研究会
北大開示文書研究会 〒077-0032 留萌市宮園町3-39-8
事務局長 三浦忠雄 TEL/FAX 0164-43-0128 mail:ororon38@hotmail.com
2.かもがわ出版に直接、お申し込みください。
http://www.kamogawa.co.jp/kensaku/syoseki/a/1100.html