アイヌ民族情報センター活動日誌

日本キリスト教団北海教区アイヌ民族情報センターの活動日誌
1996年設立 

講座「近代における金成太郎の座標」

2010-08-27 12:07:00 | インポート
イヴェント情報や秋の活動の多さから、blog記事も加速していきます(引用も多いですがあしからず)。

昨夜の推進機構の講座「近代における金成太郎の座標」(富樫利一さん)は驚きました。
以前にわたしが調べたものはバチェラー関連の方面から特に仁多見巌さんの記述やキリスト教史方面でしたが、富樫さんは過去の新聞記事や資料をもとにわたしの知らない金成太郎が話されました。
これらは詳しくは富樫さんの最新作「維新のアイヌ 金成太郎」(未知谷出版)に書かれているとのこと。それを手にしてからここで紹介したいと思いますが、ひとつだけ。
バチェラーの書の中に金成太郎がアルコール依存にかかり、愛隣学校長を解かれたとありますが、富樫さんはその同じ年に太郎の自著の資料をもとに、アルコール依存症の字と思えない達筆と評し、「アル中解雇説」に疑問符を投げつけました。その後、仁多見さんの「いちど復帰したが結核で死亡」という説も否定。バチェラーのもとで同じ「ペテロ」という洗礼名の熱心なアイヌ信徒が当時、結核で亡くなっているが、仁多見さんがその人物と金成太郎とを勘違いしたのだ、と(講演後にその名前を聞いたのですがメモし忘れました。確か「チリパ」だったか、と)。
太郎はアイヌアイヌ保護の請願をするべく奔走し、1897年函館にて客死。

以前に書きましたが、ここに出てくる「愛隣学校」は1892年に室蘭郡から不法建築として取り壊しを命ぜられます。そのあと地に幼い頃のわたしの母が祖父母と共に移ったとのこと。

愛隣学校はその後、函館に開設され、金成マツ・ナミの姉妹他5名が学ぶことになります。
函館に出来たアイヌ協会函館支部の方が先日、調べで愛隣学校跡地が分かったということを言われていました。


紋別アースディで造った笹舟。ちゃんと浮いてます!(yanagiさん提供)


先住民族の10年市民連絡会から以下の集会案内が届きました。
かなり無理があるのですが、どうしても聞きたい内容ですので、暑い東京に行って来ようと思います。以下、案内文を引用します。

「先住民族の権利に関する国連宣言」採択3周年記念集会
アイヌ民族と琉球・沖縄民族の若者からの提言

 2007年9月13日、国連総会にて「先住民族の権利に関する国連宣言」が採択されました。歴史上画期的なこの先住民族権利宣言の採択は、世界の先住民族に大いなる勇気と希望を与えています。
 日本では、2008年6月、衆・参両院で「アイヌ民族を先住民族とすることを求める決議」が採択され、同年7月、内閣官房長官の私的諮問機関「アイヌ政策のあり方に関する有識者懇談会」が発足しました。2009年7月、有識者懇談会の報告書が発表され、それに基づき、同年12月、内閣官房の下に「アイヌ政策推進会議」が設置され、現在、具体的な政策についての議論がなされています。
 琉球・沖縄に関しては、2008年、国連自由権規約委員会は日本政府に対して「琉球・沖縄人の先住民族としての権利を認めるよう」勧告し、また2010年、国連人種差別撤廃委員会は沖縄における不均衡な軍地基地の集中が住民の経済・社会・文化的権利を侵害していると勧告しています。沖縄の米軍基地移設問題が首相交代の要因だったことは記憶に新しいところです。
 先住民族権利宣言の採択3周年を迎える今年は、今後をみつめ、次代を担う若者たちの思いを語っていただきます。お誘い合わせのうえ、ご参加ください。

日時 : 2010年9月3日(金)午後6時30分~8時30分(6時開場)
お話:
 「アイヌ政策に期すること」
   ――能登 千織(北海道白老町学芸員、「アイヌ政策推進会議」委員)
 「沖縄の現状と将来への思い」
   ――知念 幸見(琉球弧の先住民族会)
 「2009-10 アイヌ民族と琉球・沖縄民族に関する論点」
   ――上村 英明(市民外交センター代表、恵泉女学園大学教授)

会場:東京麻布台セミナーハウス 2階 大研修室    [東京都港区麻布台1-11-5]
    ・地下鉄日比谷線「神谷町駅」1番出口より徒歩3分
    ・都営大江戸線「赤羽橋駅」赤羽橋口より徒歩8分
参加費:1000円(資料代含む)※予約不要。どなたでも参加できます。
主催:先住民族の10年市民連絡会  協力:市民外交センター
●お問い合わせ:先住民族の10年市民連絡会
 Tel/Fax:03-5932-9515 E-mail:indy10-Lj@infoseek.jp


今年の1月始めの毎日新聞に能登さんのインタビューが載っていました。わたしのストックから紹介。
「新春インタビュー:/3 政府のアイヌ政策推進会議メンバー、能登千織さん /北海道」
http://blog.goo.ne.jp/ivelove/e/b3481dcd5c944feed8863d197b7bc11e
そう言えば、推進会議のメンバーとなったアイヌ民族の皆さんのお話を伺う機会がないですね。審議状況や個人的な思いなど伺う企画を持てないものでしょうか。なにか考えられたらと思います。
沖縄からや上村さんの発題も期待しています。


天塩の教会員Yさんの牧草地。育成をいれて100頭の乳牛農家です。今年の留萌は雨がたいへん多く、先日は天塩でも水害があり、牛が流されるなどの被害が出ました。上水道の貯水場にも土砂が入り断水するなど大変だったと伺いました。


「北海道外アイヌの生活実態調査」作業部会

2010-08-27 07:33:31 | インポート
アイヌ政策推進会議の「北海道外アイヌの生活実態調査」作業部会は3月から4回開催しており、「議事概要」は以下のURLでダウンロードできます。
(第4回「議事概要」によると、8月中に第5回会議をおこなうとありますので、もしかすると会議録にはまだUPされていませんが、5回目を開催したかもしれません)
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/ainusuishin/kaisai.html

調査対象の絞込みという大変むずかしい部分を扱っていますが、十分に多くのアイヌ民族の皆さんからの意見を聞くべきだと思います。審議にも入っていますが政策に活かされる調査を望みますし、たいへんデリケートな調査ゆえ、丁寧におこなって頂きたいですね。
第4回議事概要にプリテスト用の調査票を作ってプリテストをすると書いていますが、この数日の報道でアイヌ政策推進会議の第2回目の全体会議がおこなれたことが載っていました。以下、道新記事を引用します。


道外アイヌ民族の生活実態、10月にも調査開始 推進会議
(北海道新聞 08/25 07:58)
 政府のアイヌ政策推進会議(座長・仙谷由人官房長官)の第2回全体会合が24日、首相官邸で開かれ、道外のアイヌ民族の生活実態調査を10月にも始める方針を確認した。
 調査は道外に住むアイヌ民族の収入や学歴などを把握するのが狙いで、新たに道外でも実施する生活・教育支援策の参考にする。15歳以上(10月1日現在)が対象で、道内のアイヌ民族の親族をたどるなどして国が調査対象者の確定作業を進めている。
 調査は郵送で行い、年内に回収。来年2月をめどに結果をまとめる予定だ。
 アイヌ政策推進会議の全体会合は今年1月以来。同会議のもとに設置され、3月以降に議論を重ねてきた「道外での生活実態調査」「民族共生の象徴空間づくり」の両作業部会が中間報告を行った。両部会は来春にも最終報告をまとめる。
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/donai/247842.html


朝日新聞(2010年08月25日)の記事には、少し詳しく以下のことが書かれていました。

 生活実態については、調査対象を明治時代以降に道外に転居したアイヌの人々またはその子孫の15歳以上(10月1日現在)とすることや、北海道アイヌ協会を通じて道外のアイヌ民族の2千世帯を一つの目安とすることなどが示された。
 現在、委託を受けた北海道アイヌ協会が調査対象者を集めており、対象者を9月末までに確定させた上で10月から調査票を郵送。内閣官房が年内中に回収し、来年2月末までに集計を終えたいという。
 会議では調査でたずねる質問案も示された。今のところ、(1)現在の仕事内容や年収、教育の状況などの生活実態(2)アイヌ文化とのかかわり(3)差別やアイヌ民族としての誇りなどの意識や考え――などが想定されている。
http://mytown.asahi.com/hokkaido/news.php?k_id=01000001008250001


他、毎日新聞(2010年8月25日 地方版)
http://mainichi.jp/hokkaido/seikei/news/20100825ddlk01010189000c.html
日本経済新聞 (2010/8/24 19:15)
http://www.nikkei.com/news/category/article/g=96958A9C93819695E0E6E2E09C8DE0E6E2EAE0E2E3E29180EAE2E2E2;at=ALL
時事ドットコム(2010/08/24-19:28)
http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2010082400808


過日の紋別でのマレック漁(写真はyanagiさん提供)


これらの報道に交じって、驚きのニュースが入っています。
道が2006年にまとめた道アイヌ生活実態調査の報告書のデータに誤りがあったのです!!
現在の生活ぶりを尋ねた質問の回答は「とても苦しい」が0.3%、「多少困る程度」は18.3%としていたが、実際はそれぞれ29.7%、51.4%と大幅に違っていた、と。どうも、「とても苦しい」から「豊かだ」までの4段階の数字をそっくり逆に記載したようです。道アイヌ政策推進室は「報告書をつくる際に入力する数値を誤った。申し訳ない」と説明。
朝日新聞(2010年8月22日)
http://mytown.asahi.com/areanews/hokkaido/HOK201008210004.html

毎日新聞(2010年8月25日 地方版)では
北海道アイヌ協会札幌支部が道に抗議し経緯の解明を求める声明を発表したと報道。
http://mainichi.jp/hokkaido/shakai/news/20100825ddlk01040190000c.html

生活実態調査は問題がありますが、いろいろなところでこの数字を紹介していました。簡単なパワーポイントを作っていたのを今回、カナダに帰国報告に出かけたウイットマー宣教師にも貸して英訳して持っていかれたので、早速訂正メールを出そうと思います。
しかし、4年も間違ったままこの結果が使われていたとは・・・困ったものです・・・



24日は天塩と初山別の家庭集会に行ってきました。途中の海の写真です。

平取で「第41回チプサンケ」が行われていたのですね。道新関連記事はこちら。
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/chiiki/247606.html