フィールドノート

連続した日々の一つ一つに明確な輪郭を与えるために

2月24日(火) 曇り一時雨

2009-02-25 03:18:50 | Weblog
  9時、起床。余りもののコロッケを麺つゆで煮たもの(カツ煮のコロッケ版)をおかずにトーストと紅茶の朝食。今日は一日自宅で原稿書き。ときどきメールが届くが、その多くは何かの依頼である。職務上断れないものがほとんどだが、中には断る自由が存在するものがある。問題はその自由を行使するかどうかである。勝間和代は『断る力』(文春新書)の冒頭でこう書いている。

  「私は今、タイムマシンに乗って20代後半の自分にたった一つアドバイスをするとしたら、「『断る力』を一刻も早く、身につけること」と言うでしょう。実際、私が「断る力」、英語にすると「Say No」、すなわち相手の言いなりにならずに拒否する力を身につけることができたと確信したのは、34歳で初めての離婚をしたときからだと思います。そして、その時から、私の世界はドラマティックに変わりはじめました。
  人から何かを頼まれる、頼られる、うれしいことです。そして、頼まれたことに対して相手の気に入るように振る舞うと、それなりのごほうびが来ます。そうやって私たちは親からも、先生からも、上司からも、育てられてきました。しかし、単に頼まれたことを断らずに唯々諾々と行うといことは、自分の人生の進路を行き当たりばったり、他人に委ねてしまっていると言い換えることもできるのです。」(11頁)

  もちろんなんでもかんでも断れと言っているわけではない。引き受けるものと断るものの区別がきちんとできる判断力、そして依頼を断る以上はそのことから生じる不利益を引き受ける覚悟ないし実力が必要だ。「断る力」はそうした力とワンセット、鶏と卵の関係にある。彼女は20代後半の自分に「断る力」を身につけろとアドバイスしたいそうだが、「断る力」を身につけそれを実際に行使できるようになるのは早くても30代半ばではなかろうか。われわれが生きている世界はそういう場所である。自分自身を顧みても、30代半ばの頃はまだ「断る力」を行使することはなかった。多少とも「断る力」を行使できるようになったのは40代に入ってからではなかったか。それでも頼まれたことの8割は引き受けていたはずだ。それがフィフティ・フィフティになるのは文字通り50代になってから、つまりつい最近の話だ。年齢の上昇は地位の上昇を伴うことが多いから、という理由だけでなく、人生の残り時間の感覚が強まるからでもある。昨日の深夜、私にとってはいささか気の重い依頼のメールが届いた。それに断りの返事を書くために1時間ほどの時間を必要としたため(「お引き受けできません」の一言ではすまないのだ)、玉突き式に、ブログの更新の時刻が1時間遅れ、就寝の時刻も1時間遅れた。しかし、先方からはすぐに返信のメールがあり、「わかりました」とは言ってもらえなかった。この件については後日会って話をすることになった。「断る力」の行使は幾つになっても容易くはない。
  昼食は「やぶ久」の鍋焼きうどんを食べに出る。少し雨が降っていたが、気分転換のためである。「やぶ久」ではいつも『週刊文春』を読む。待っている間だけでなく、食べながら読む。「鈴文」ではこれができない。「やぶ久」のような気のおけない店も私には必要なのだ。映画評で『チェンジリング』がもの凄い数の星を獲得していた。3人が満点の5つ星、2人が4つ星ではなかったか。こんなことはめったにない。さっそく駅前の格安チケット店へ行って『チェンジリング』を1枚購入する。ついでに『スラムドッグ$ミリオネア』と『ジェネラル・ルージュの凱旋』のチケットも購入。
  有隣堂で以下の本を購入し、いつもならば喫茶店で読むところだが、今日はそうのんびりもしていられないので、帰宅する。

  嵐山光三郎『追悼の達人』(新潮文庫)
  加藤周一『私にとっての20世紀』(岩波現代文庫)
  福岡伸一『生物と無生物のあいだ』(講談社現代新書)
  『文藝』2009年春号
  季刊「at」14号
  『昭和30年代の大田区 蘇る青春の昭和』(三冬社)
  『PHPスペシャル 幸せ時間セオリー』

  『追悼の達人』は昨夜娘が読みたいと言っていた本で、家の中のどこかにあるはずなのだが、捜しても見つからなかったので(もしかしたら研究室か)、もう1冊買うことにしたのである。「断る力」はまだまだの私であるが、「同じ本を買う力」はけっこうある。ただし、それはときとして「買ったことを忘れてしまう力」(赤瀬川原平いうところの「老人力」の一種)である場合もある。今回は「買ったことは覚えているがどこに置いたかを忘れてしまう力」なので、これは所有している本の数や保管場所の問題とも関連しており、単純に「老人力」の一種とはいえない。そういうことにしておきたい。
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