6時、起床。
早くに目が覚めたのは部屋のカーテンを閉めずに寝たからで、おかげで美しい夜明けの風景を見ることが出来た。
ホテルの食堂で朝食。ご飯二杯、しっかり食べる。
ホテルの周りを朝の散歩。駅を降りて、自転車で学校へ向かう高校生たち。旧制弘前中学(現在の弘前高校)の出身である石坂洋二郎の小説(何度も映画化された)『青い山脈』の世界だ。
9時半にホテルをチェックアウトして、中央弘前駅の方へぶらぶらと歩く。
一戸時計店(お隣の弘前中央食品市場へは昨日立ち寄った)。
昨日も立ち寄った弘前昇天教会。
中央弘前駅に到着。「シュバルツバルト」に電話をして、「昨日高瀬君と伺った大久保ですが、今日はこれから一人で参ります。10時30分発の大鰐線にこれから乗りますので、11時の開店の頃にそちらに着きます。東京に帰る前にもう一度ピーチメルバをいただきたいと思います」と伝える。電話にはシェフが出られたようだった。
駅の待合所の一角にラーメン屋があって、常盤貴子の缶コーヒーのポスターカレンダーが貼られていた。2008年のもので、カレンダーとして役目は終えているのだが、ポスターとしてそのまま剥がされずにいるわけだ。古い食堂でときどき見かける風景であるが、そこだけ時間が止まっているように見える。
大鰐線は沿線の風景がいい。電車の速度も沿線の風景を眺めるのにちょうどいいように思う。
終点大鰐に到着。JRの奥羽本線大鰐温泉駅のホームとは袴線橋でつながっている。
遅ればせの入道雲が湧いている。
空には入道雲だが、道端にはコスモスが咲いている。
「シュバルツバルト」には私が本日一番乗りの客だった。
昨日に続いての来店ということで、マダムが喜んでくれて、「これは私からのプレゼントです」と言って、季節限定メニューのパッションフルーツを使ったスイーツをピーチメルバの前菜としていただく。マンゴーとグゥバが使われている。私はマンゴーが好物なので、このプレゼントはとても嬉しい。とくにガリガリ君マンゴーには目がないのだが、そのことは言わずにおいた(私はおしゃべり好きだが、話題はちゃんと選んでいるのだ)。
特別に撮影を許可していだだく。(当初は店内撮影OKだったのだが、他のお客さんのテーブルまで撮影する人がいたので、撮影禁止にしたのだそうだ)。
そして、ピーチメルバ!
二日連続、「まやんち」のものを入れて、今季通算9個目のピーチメルバである。
食べるのがもったいない美しさである。スプーンを入れる前にしばしうっとりと眺める。
意を決して口に運ぶ。美味しい!
桃は川中島という名の白桃を使っている。先日、卒業生のNさんからいただいた桃も川中島だった。その名前の通り信州産だが、青森で作っている川中島を使っているとのこと。だから9月の終わりごろまでメニューに出せるのだとのこと。
食べ終わった後も、食器を下げるのを待ってもらって、しばらくグラスに残った歌舞伎の隈取のような模様を眺める。
私がピーチメルバを食べいるとき、天ぷら屋の「いもや」のご一家がやって来られた。ご主人と奥さん、そして娘さんの3人だ。昨日の夜、「いもや」で食事をしたとき、「シュバルツバルト」のピーチメルバの話になって、ご主人も私同様甘いものが好きで、「シュバルツバルト」はときどき訪れるそうだ。でも、ピーチメルバは年に一回で、ピーチメルバの季節になると、「シュバルツバルト」のマダムから電話でメニューに出ましたと連絡をもらうのだそうだ。その年に一度のピーチメルバの日が今日なのだ。昨日、もしかしたら店で一緒になるかもしれませんねとご主人と話をしたのだが、その通りになった。店には他に客はいなかったので、私と、「いもや」のご一家と、「シュバルツバルト」のマダムで、話の輪が出来る。われわれの仲立ちになってくれた今日は不在の高瀬君に感謝。
支払いのときに厨房からシェフも出て来られて挨拶をされる。しばしピーチメルバ談義。これはもう年に一度、ここにピーチメルバを食べに来るしかなくなったのではないだろうか。ついでに「いもや」の天ぷらも(笑)。
さて、昼食はどこで食べようか。
大鰐の駅前にある「山崎食堂」。心惹かれるものがあったが、青森へ戻って、「ペピーノ」へ行くことに決める。
帰りは大鰐線ではなく、奥羽本線の大鰐温泉駅から乗る(大鰐線の大鰐駅はすぐ隣にある)。
終点の弘前駅で降りて、コインロッカーから荷物を出し、1時発の青森往きに乗る。さようなら、弘前。
2時前に青森着。
「PEPINO」へ。今日のセットメニューの中のトマトカレーのドリアもいいなと思ったが、やはり今日はこれを注文しようと思っていたものを注文することにした。
ペピーノソムリエサラダ。セットで付いてくるサラダより質量ともに豊富。この店で食事をするならこれは注文すべきメニューと思う。
サーロインステーキ(150グラム)。野菜が売りの店であえて肉料理を注文してみたかった。めったに注文する客がいないのだろうか、隣のテーブルに座った女性がこちらのテーブルをしげしげと眺めて、「サーロインステーキですか?」と尋ねた。「はい、そうです」と答えると、彼女もそれを注文したい欲求に駆られたらしく、しばしメニューを眺めて熟考、結局、ハンバーグを注文した。もしかしたら予算の問題もあったのかもしれない。
デザートにはパイナップル(4分の1カット)を注文。食後のコーヒーも。
「PEPINO」には1時間ほど滞在した。ゆっくりと料理を味わうことができた。支払いは2500円ほど。充実した内容でリーズナブルといえる。メニューには野菜カレー、パスタ、ドリア、ピザ等もある。次回の楽しみとしておこう。
食後のコーヒーは「PEPINO」で飲んだので、青森での残りの時間(あと2時間半ほど)は、街歩きとお土産の購入にあてよう。
県庁前の公園で一服する。
埠頭に出てみる。やはり青森旅行の最後は海で締めたい。
家族へのお土産は物産館で買っていく。りんごぱい、りんご飴、蛸飯の素、帆立飯の素・・・そういう食べ物系で。
買い物を済ませ、「人気ナンバーワン」のりんごのアイスクリームを食べる。「人気ナンバーワン」という言葉に弱い。
青森駅に向かう。自転車に乗る人たち。
5時29分の奥羽本線でお隣の新青森まで行き、そこから5時44分発の東北新幹線はやぶさ32号に乗って、東京に帰る。
青森駅構内から見た夕日。
同じく青森駅構内からみた夕日。
そして、新青森駅の構内から見た夕日。
さあ、走れ、はやぶさ。夕日を追いかけて走るのだ。
夕食は新青森駅で購入した「津軽の幕の内弁当」。
東京まであと1時間というあたりで弁当の蓋を開ける。駅弁の基本はやっぱり幕の内である。
9時4分東京着。
帰宅したのは10時ちょっと前。
風呂から出て、旅行に行く前にNさんからいただいた白桃(川中島)を食べる。うん、美味しい。「シュバルツバルト」のシェフがピーチメルバの材料に選ぶだけのことはある。
長期の旅行も魅力的だが、2泊3日くらいのの小旅行が、時間的にも、金銭的にも、体力的にも、私にはちょうどいい。ヒューマンスケールに合っているともいえる。旅の楽しみは、見ること、食べること、そして人と出会うことである。8月の信州旅行に続いて、今回もよい旅だった。