フィールドノート

連続した日々の一つ一つに明確な輪郭を与えるために

6月15日(日) 晴れ

2014-06-16 11:09:37 | Weblog

   8時、起床。

     マフィン、サラダ、紅茶の朝食。

     今日は12時から「SKIPA」で句会がある。サッカー・ワールドカップの日本対コートジボアール戦の前半(1-0で日本がリード)を観てから11時に家を出る。神楽坂の駅を出て、歩いていると、今日の参加者の一人であるフリー校正者のTさんが路上でラジオを聞いている。「こんにちは。サッカーはどうなりましたか?」と尋ねると、「1-2で負けています。もうロスタイムです」と言ったので、「えっ!」と思った。ほどなくして試合終了。負けちゃったか。これでいきなり日本チームは崖っぷちに立たされた。確率的にはトーナメン進出(ベスト16)の可能性は小さくなってしまったが、逆転劇「ルーズヴェルト・ゲーム」のお膳立ては整ったともいえる。観てみたいものだ、逆境からの逆転劇。

   今回の句会の参加者は7名。主宰の紀本さん、フリー校正者のTさん、編集者のMさん、Mさんの友人で中学教師のKさん、卒業生で書家のEさん、今日が初参加の卒業生でTV局勤務のW君、私である。W君をみんなに紹介する。W君は紀本さんと同級生だ。「Eさんとはどちらが先輩なのですか?」と誰かが聞いた。慌てるEさん。「紀本さんとW君は2000年卒で、Eさんは2007年卒です」と私が説明する。だいぶ違いますけどね(笑)。

     各自飲み物を注文して(私はシークァーサー)、句会の始まり、始まり。

     今回の作品は7名×3句=21句。兼題(あらかじめ指定されたお題)は「赤」。投句3句の中に、「赤」という字を入れた1句を入れるという制約が今回はあった。

     紀本さんが各句を2度ずつ読み上げた後で、選句の作業に入る。各自が21句の中から(ただし自分の作品は除く)3句を選び、天(5点)、地(3点)、人(1点)と順位を付ける。

     選句中の風景。写真左からW君、紀本さん、Eさん、Kさん、Tさん、Mさん。

     選句を終え、Kさんから順に左回りに自分が選んだ3句を発表する。結果、上位5句は以下の通り。

        13点  かき氷女は赤き舌を出す

        12点  しゃぼん玉吹く子らの背と母の背と

        10点  甲虫(かぶとむし)赤子を牽いて消えにけり

        5点   迷いなく夏服を着た女たち

        5点   梅雨冷えやはちみつの雨ティータイム

   上位の句から(1点を獲得したものまで)、その句を選んだ人はその理由の述べ、選ばなかった人も(紀本さんに指名されて)その理由を述べる。その後で、作者が明かされる。

   「かき氷―」の作者は私。TさんとEさんが天、W君が地を付けた。兼題の「赤」を詠み込んだ句である。最初、「かき氷少女は赤き舌を出す」とした。氷イチゴを食べて、赤くなった舌を見せている(見せ合っている)女の子。かわいいが、ちょっと物足りない気がして、「少女」を「女」に変えた。子どもがするような仕草を大人の女がすることで、お茶目で、かつ、官能的な雰囲気が出た。字面では「氷女」=「雪女」という文字も見えるので、真夏の夜の怪談のような雰囲気もあるだろう。評で面白かったのは、Mさんがこの句を選ばなかった理由として、こういう官能的な(品のない)句は自分は好きではありませんと言ったことだ。好き嫌いのはっきり出る句ではないかと予想していたので、やっぱりね、と思った。実は、「赤」の入った夏の句と聞いて、私は山口誓子の「夏の河赤き鉄鎖のはし浸る」が真っ先に思い浮かんだ。それで、この名句の構造を真似て、「かき氷赤き女の舌動く」としようかともチラッと考えたのだが、これはさすがに官能的過ぎるだろうと思いとどまったのである。思いとどまってよかった。

   「しゃぼん玉―」の作者はW君。初参加での上位入選である。4月の私の還暦の祝いの会のときに、私から句会の話を聞いて、参加を決めてからNHKTVの俳句講座のテキストを買って勉強を始めた成果がいきなり出たわけである。一種のビギナーズラックということもあろうが、家族を詠んだ句は支持を集めやすいということもある(少なくとも官能的な句よりも)。実際、この句は今回最多の4人から支持を得た(天が1、地が2、人が1)。この句の鑑賞では、作者と「母と子」の関係が問題になった。母と子は作者の妻と子であると私は読んだ。したがって、これはW君の句に違いないと思った。作者がW君という私の推測は当たったのだが、しかし、母と子はW君の妻と子ではなかった。母はW君の母で、子はW君の子だった。つまり、この句はお祖母さんと孫たちがしゃぼん玉をしている情景を詠んだものだったのだ。そうだったのかと意表を突かれた一方で、では、W君の妻、子どもたちの母親は一体どこにいるのだろういう疑問が湧いた。しかし、その点を句会の場でW君に聞くのはやめておいた。それぞれの家庭には複雑な事情があるかもしれないからだ。

   「甲虫―」の作者はTさん。紀本さんとW君が天を付けた。私は昆虫があまり好きではないということもあって、この句は私の選の候補にならなかったが、Tさんの説明を聞いて面白いと思った。私は(他の人も)、この句は廊下かどこかで赤ん坊が甲虫の後ろをはいはいで追いかけている(甲虫が赤ん坊を見えない糸で牽いているように見える)様子を詠んだものと解釈したが、Tさんの説明(作意)では、本当に甲虫が赤ん坊を引っ張って森の中に消えていくというファンタジックな、怖い童話みたいな情景を詠んだとのこと。この句に限らず、想像や空想の世界の情景を詠むのはTさんの得意とすることろである。

   「迷いなく―」の作者は私。前回の句会で「春服や会いたき人に会いに行く」という句を出していたので、一種の連作のつもり。「来た」は「着た」の間違い(変換ミス)。選句のときに訂正させていただいた。「かき氷―」の句を官能的(品がない)という理由で退けたMさんがこの句に天をつけてくれた。同じ「女」を詠んだ句だが、この句の「女」は官能的ではなくさっそうと自立した「新しい女」という印象を与えたようである。実は、Tさんはご存じだったが、「夏服を着た女たち」というのはバーナード・ショウの短編小説のタイトルである(原題はGirls in their Summer Dressesで、常盤新平がこう訳した)。好きな小説で、いや、好きなのはタイトルなのだが、毎年、夏が来る度にこの小説(のタイトル)が頭をよぎるのである。そういうわけで、「夏服を着た女たち」という七五のフレーズが最初にありきで、頭の五をどうするかをあれこれ考え、「迷いなく」に迷いなく(というわけではなく)決めた。

   「梅雨冷えや―」の作者はEさん。Kさんが天を付けた。「はちみつの雨」という表現はEさんが好きなブルーハーツの「手紙」という歌の中の「背骨で聴いている蜂蜜の雨」から採っている。実は、私も投句はしなかったが、今回の句会用に作った句の中の1つにブルーハーツの歌に由来するものがあった。「夏休み心のずっと奥の方」というのだ。言うまでもなく、「心のずっと奥の方」は「情熱の薔薇」の一節である。Eさんは「情熱の薔薇」の歌詞全部を書にして展覧会に出品したこともある。もし、「夏休み心のずっと奥の方」を句会に出しいたら、Eさんはニヤリとしたことだろう。

     選評が終わって、食事になる。私とTさんが定食を、他の5人はチキンカレーを注文。

     次回の句会は8月24日(日)に決まる。兼題は特選の作者が決めることになっているので、今回は私。食事中に考えて、「風」とさせていただく。「風」という字が入っていればよいので、「風呂」とか「風来坊」とかでもよいのである。

     「梅花亭」の店先でセールをやっていた。明日(6月16日)の「和菓子の日」にちなんだイベントの一環らしい。レモン大福とみたらし団子を購入。

     Eさんと「花」に行って、かき氷を食べる。

     私はあずき。

     Eさんはいちごミルク。

      「かき氷女は赤き舌を出す」のポーズをお願いしたら、やっていただけたのだが、あまり官能的に撮れなかったので、ボツとなる(もし官能的に撮れたら撮れたで、やはり載せられなかったと思うが)。

     代わりに歩行者天国の神楽坂を自転車を押しながら歩いているところを撮ったEさんらしい笑顔の一枚を載せておく。

     5時頃、蒲田に帰ってくる。 

     「phono kafe」に寄っていくことにする。

   客はいなかったが、今日は昼から4時頃までずっと満席状態で、大原さんはちょっとバテ気味であった。

     リンゴジュースとごぼうのフリットを注文。

   しゃべっているうちに大原さんも元気を回復してきたようである。

     6時から7時までの最後の1時間は夕食を食べに来る客でまたちょっとばかり混むだろう。もうひと踏ん張りです。

     今日の我が家の夕食は青椒肉絲(チンジャオロースー)。