花邑の帯あそび

1本の帯を通して素敵な出会いがありますように…

「雀文様」について

2010-11-30 | 文様について

presented by hanamura


明日から12月です。
今年もあとわずかですね。
年末年始の用意にむけて、
忙しくされている方も多いのではないでしょうか。
道行く人々も心なしか足早になっているようです。

風邪が流行しているようですが、
身体には十分気を付けて年末年始を迎えたいですね。

花邑 銀座店では、
12月4日(土)から12月12日(日)まで、
「動物の帯展」を開催します。

作り手の愛情が伝わってくるような
動物をモチーフにした
帯を数多く揃えて皆さまをお待ちしております。

慌ただしい師走の中、
心温まるお時間となっていただければ幸いです。

本日は、その「動物の帯展」でご紹介する商品の中から、
「雀文様」のお話しをしましょう。

「ちゅんちゅん」とさえずり、
小さくて、ぷっくりとした雀は、
そのかわいらしい姿から、
古来より人々に愛されてきた動物です。

小さな雀は、天敵から身を守るために
群れをなして人が集まる場所で巣をつくります。
そのため、人家の近くでもよく見られます。
人々の営みの中で棲息をしている鳥ともいえるでしょう。

大切な食料である稲との関わりも深く、
春先には稲につく害虫を食べてくれるありがたい鳥でもあり、
秋口には稲を食べてしまう困った鳥でもあります。
そうしたことから雀は古来より親しまれ、
「舌切雀」や「雀の学校」の雀のように、
民話や民謡などに数多く登場しています。

雀は、文様としても人気の高いモチーフのひとつです。
その歴史は古く、平安時代後期まで遡ります。
そして、その人気をあらわすように、
様々に文様化されてきました。



雀の文様は、単体であらわされることは少なく、
自然の情景の中に、可愛らしい姿を配することが多いようです。
その中でも、雀がよく集う竹藪の竹とともに意匠化した「竹に雀」、
稲穂とともに意匠化した「稲穂に雀」の組み合わせは
とくに人気がある意匠です。

ちなみに「竹に雀」のモチーフは、
下の写真のように、
仙台藩伊達家の家紋としても有名です。



また、本来の雀の姿をアレンジしたような
「ふくら雀」とよばれる文様があります。
「ふくら雀」は、寒さをしのぐために、
全身の羽根を膨らませて、温かな空気が漏れないようにと、
じっとしている雀の姿を意匠化したものです。

もともとふっくらとした身体が、
さらにふくらんだ雀の姿は、
雀本人の苦労とは裏腹に、
とても愛らしく、おかしみが感じられます。

下の写真は、竹とふくら雀の人気の高い組み合わせの意匠で
明治時代につくられた和更紗です。
細かく連続的にあらわされた竹とふくら雀の意匠は、
竹薮に集まる雀のさえずりまでも聞こえてきそうです。



「ふくら雀」の「ふくら」は「福良」とも当て字され、
縁起の良い文様とされています。
伝統文様には縁起を担いだ、
吉祥文様がたいへん多くあります。

飢饉や天災などが多かった昔は、
安全な生活、幸せな暮らしへの願いを文様に込め、
それを身にまとうことで災厄から身を守っていたのです。

モノがあふれる豊かな時代にはなりましたが、
暗い話題も多い現代です。
昔の人々のように、
新年に向けて、明るく、福を運んできてくれるような
お気に入りの逸品を探してみてはいかがでしょうか。

※上の1枚目と3枚目の写真は「動物の帯展」でご紹介する名古屋帯の文様です。

花邑のブログ、「花邑の帯あそび」
次回の更新は12月7日(火)予定です。


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