花邑の帯あそび

1本の帯を通して素敵な出会いがありますように…

「鈴文様」について

2010-11-02 | 文様について

presented by hanamura


明日は文化の日。
ここ東京では、穏やかな秋晴れとなるようです。
文化の日を過ぎると、暦の上ではまもなく立冬となり、
いよいよ本格的な冬を迎えます。

1年の中でもっとも夜が長いこの時期は、
月や星を長く眺めることができます。

とくに冬は夏と比べて、
空気中の水蒸気が少ないので、
夜空に浮かぶ月や星がくっきりと澄んで見え、
星座観察には最適のようです。

ふと見上げると、
寒い初冬の闇夜に浮かんだ満月は、
ひときわ美しく光を放っているようです。

さて今日は、満月と同じく
丸い形をした「鈴」の文様についてお話ししましょう。

球状の鈴は、日常生活の中でもよく見かける、
馴染み深い「楽器」です。

鈴と聞くと、首輪に鈴をつけた
飼い猫の姿を想像する方も
多いのではないでしょうか。

「リンリン」と小さな音をたてて歩く猫の姿は、
とても愛らしいですね。

球状の鈴は、歴史がとても古く、
古墳時代に大陸から日本にもたらされました。

そして、神さまをよぶための儀式に用いる
神聖な楽器として、
用いられるようになりました。

現在でも、お祭りの際には神社で
たくさんの鈴をつけた「神楽鈴(かぐらすず)」を鳴らして、
巫女(みこ)さんが奉納の舞いを踊りますね。

また、神社には賽銭箱の上に
大きな鈴が取り付けられていますね。
その大きな鈴を「ガラーン」と鳴らせば、
神さまが訪れるとされています。

昔は、神さまが訪れるの「訪れる」は、
「音連れる」とあらわされたようで、
音楽と神事は縁の深いものなのです。

その中で、音の鳴る鈴は大事な役割を果たす器物でした。

また、邪気や悪いものから
身をまもるという意味合いもあったようです。

そういえば、最近では
熊が市街地に出没したというニュースを
よく目にするようになりました。
山歩きなどをしているときには、
その熊対策として
ベテランの方などは杖の先に鈴を付け、
リンリンと鳴らしながら歩かれています。
熊は大きな音を警戒するようです。

鈴が着物や帯などの文様として用いられるように時代は
いつごろなのか定かではありませんが、
神楽鈴をモチーフにした江戸時代の肩衣(かりぎぬ)が
残されています。

江戸時代には鈴の丸い形のかわいらしさと、
邪気除けのお守りとしての意味から
子供の着物の意匠にも多く用いられました。



上の写真は、鈴文様をすくい織りであらわしたものです。
寄り添うように並んだ鈴の中には
菊や七宝などの伝統文様が配されています。
伝統文様の古典的な趣きが強いなかにも
明るいお色目がかわいらしさを感じさせます。

さて、11月を過ぎれば間もなく年末年始です。
1年の中でも神社や教会などで
鈴を鳴らす機会がもっとも多い時期になります。
身心を浄め、あらたな幸福を呼び込めるような
良い音を鳴らしたいものですね。


※写真は花邑銀座店でご紹介している洒落袋帯の文様です。

花邑のブログ、「花邑の帯あそび」
次回の更新は11月9日(火)予定です。


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