花邑の帯あそび

1本の帯を通して素敵な出会いがありますように…

花邑日記

2008-10-28 | 花邑日記

presented by hanamura


「花邑日記」

日の光に木の葉が照らされる暖かな日が続いています。
この日、そよ風に草花が揺れる庭には、美しい紫色の野牡丹が咲いていました。
その野牡丹は「紫紺牡丹」という名前で、
もともとは南国で咲く花だそうです。
そのため、寒さに弱く本来ならば時期が過ぎた花なんです。
それがこの季節にこんなにも生き生きと咲いているのは、
この気候のせいでしょう。



さて、せっかくのおだやかな天気なので、
仕入れたばかりの「和更紗」(※1)を洗うことにしました。

仕入れた和更紗のほとんどは、
江戸時代後期から大正時代につくられたものです。
歳月を経て多少色が褪せていますが、
それがかえって和更紗を味わい深くしています。
しかし、埃や汚れはどうしても付いてしまっています。

こういった和更紗などの古い布は、
水に浸けて洗うことで埃や汚れが落ち、
布の繊維も整い、布そのものが蘇ったように「シャキッ」とします。

そのため、花邑では仕入れた和更紗の多くを洗ってから、帯に仕立てています。

しかし、全く水に通されたことがなく、
色が褪せていない和更紗は、
水に通すと色が落ちてしまうことがあります。
こういった和更紗は保存状態も良いので、
洗わずにアイロンでしわを伸ばすだけにしています。

また、たくさんの色が用いられている和更紗は
色移りが心配なので
プロの洗い張り屋さんに頼んでいます。

しかし何回か水に通され、ある程度まで色が褪せた和更紗は、
水を通してもほとんど色落ちの心配がないので
そのまま水で手洗いしています。

洗面所に水を溜め、弱酸性の洗剤をすこし入れ、
手で丁寧に押し洗いをします。
洗った和更紗は軽く脱水をかけて庭に干します。



物干し竿に干された和更紗が、
庭の草花と融け合って風に揺れています。
和更紗の文様が庭を彩ります。
その美しい光景に思わず見とれてしまいました。

しかし、見とれてばかりではいられません。
この日のようによく晴れた日は、布の乾きがとても早いのです。

色が落ちるのは、水に浸けたときよりも布が乾くときなのだそうです。
そのため完全に乾かすのではなく、
生乾きでアイロンをかけて色落ちを防がなければいけません。
また、生乾きの状態ならば、布の目を整えてアイロンがけができます。
布の織り方によって乾く速度も変わってくるので、注意が必要です。

そのため、乾きすぎることのないように気を配りながら
手で布をさわり乾き具合をみます。

暖かな風に揺られた和更紗の布が
帯へと生まれかわり、着物を彩ります。

(※1)「和更紗について」をご覧ください。

花邑のブログ、「花邑の帯あそび」
次回の更新は11月4日(火)予定です。


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