presented by hanamura
『着物1枚をつくるための工程は、
山のようにあり、そしていろいろな職人が関わっています。』
と悉皆屋さんは以前にお話ししてくれました。
しかし、職人の数はだんだん少なくなっています。
そしてそのまとめ役である
悉皆屋さんも同様に少なくなっているのです。
その原因のひとつに、
「悉皆屋同士の繋がりがないことから、職人に仕事がまわらない」(※1)
ということがあるようです。
しかし、大きな原因は「外国への職出し」です。
『ほとんどが人件費の安い外国に行っていますね。
模様師の仕事はそれほどでもありませんが、
その他の加工は中国やベトナム、キューバなどに行っています。
白生地はほとんどが中国製。
風合いはまったく違います。
加工も外国。最後の一部の加工だけを日本で行い完成させるんです。
藍染めも同じです。
本藍で染めれば色が出るけど、化学染料だと出ない。
けれど、化学染料で染めた後に本藍をちょっと添加して匂いを足せば
藍染めになってしまいます。
このごまかし方だと見分けるのは厄介ですね。』
「藍染め」までも、「ごまかされて」いたのでは、
他のものはどうなのだろう?と、考えてしまいますね。
このように、外国に加工がいってしまうことになったのは、
最近のことなのでしょうか?
『20年ぐらい前からだと思います。
国内では値段が高いということで、最初は仕立てから。
特に中国に行っていました。
絞りは韓国でやっていましたが、今は中国に追い抜かれています。
中国には日本からかなりの業者が行って設備投資をしています。
向こうなら、通常の袷の仕立てが10年前で7,000円。
日本なら、レベルの高い人が丹念にやれば普通で3万円、
品物によっては5万円、10万円かかります。
だからもっと値段を抑えるために中国へ出すようになったんです。』
それは、着物の業界が低迷してきたために、
利幅をだすためなのでしょうか?
『低迷する前から利幅をだすために海外に出しています。
着物業界が低迷してきたのはその後のことです。
大手の呉服屋さんなんかは、商社と組んで月に何百枚も中国に送って
安い値段で仕立てさせて利益をだしていました。
それをやられると、国内の仕立て屋さんは仕事がなくなって、
みんなでアルバイトに行っています。
加工がどんどん崩れています。』
『私の家業にしても、もはや機械の部品が供給できなくなっています。
たとえば、染織業界がみんな使っている1本の糸で縫う端縫いのロックミシン
がありますが、それももう生産が止まっています。
こうした染織関係の機械を製作している会社は関西にありますが、
みんな仕事を切り替えています。
だから何かのときにどこかで辞めた人のものを譲ってもらいながら、
大事に使っていくしかない。
悲しいですけど、どんどん先細っています。』
昔から受け継がれてきた日本独自の技術や、
道具までもがなくなってしまうのは
本当に悲しいことですね。
(※1)「悉皆屋さんのおはなし-その9-」をご覧ください。
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