ヌマンタの書斎

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日本の財政赤字

2016-01-08 12:34:00 | 経済・金融・税制

消費税の増税は必要か?

少子化と高齢化という二つの問題を抱える21世紀の日本にとっては、その対策が非常に重要なのは言うまでもない。日本人の気質というか、困った時のお上頼りは、必然的に高福祉国家を目指す。

これは如何なる政権であっても変わらないと思う。しかし、手厚い福祉を実現するためには、どうしても財源の裏付けが必要となる。その裏付けの役割を負うのが消費税だとされている。

少子化は、国内労働力の減少であり、また高齢化は、国内の消費動向を著しく束縛する。必然的に、国内における経済活動は、高度成長期を抱えた20世紀とは大きく異なることになる。

右肩上がりの経済ならば、儲けに対する課税に事業体(会社や個人事業者)は耐えられる。しかし、よくて停滞であり、穏やかな衰退を迎える21世紀の日本において、儲けに対する課税は徐々に担税力を失っていく。

だからこそ、既に高齢化社会と高福祉政策を担う北欧の国家は、大型の間接税を国家の税収の柱としている。フランス、イギリスなども、これに追随する形となっているのはご承知のとおり。

日本における大型の間接税は、消費税という名の流通課税である。税を負担するのは消費者だが、実際に税を納めるのは、各流通段階における事業体が担うこととなっている。

そのため、消費税の申告納税の煩雑さは、本来の負担者である消費者には分かりづらい。

その煩雑さの際たるものが、今話題になっている軽減税率である。大企業はいざ知らず、中小企業や零細事業者の申告書の作成を担う我々、税理士業界としては、非常に頭が痛い問題である。

だからという訳ではないが、改めて増税の必要性について考えてみたい。

手厚い福祉政策の財源として、大型の間接税の必要性は、私でも分かる道理である。しかし、その前提となる、日本政府の財政状態についての認識がおかしい様に思えて仕方がない。

新聞、TVが盛んに伝える財政赤字1000兆円であるが、私はこの数字の内容をかなり疑っている。日本政府が、この30年以上にわたり赤字国債を発行して税収不足を埋めてきたのは事実である。

しかし、国債という借金の総額だけで、単純に財政赤字だと騒ぐのは、会計学の知識があるものなら、その不自然さに気が付かねばならないと思う。借金という負債があるのは分かるが、その反対科目である資産を論じないのは、どう考えても不自然である。

ところが日経新聞はもとより、他の朝日、読売、毎日といった大手のマスコミは、この日本政府の資産を含めた上での、財政赤字の論評をろくにしていない。かつて行革を旗印にしていた産経も同様であり、私としては呆れるほかはない。

日本の大手新聞社に入るには、大卒それもかなり優秀な大学からの就職が大半であるはずだ。当然に経済学の素養はあるはずであり、会計の基礎的な知識ぐらいは、持ち合わせているはずである。

にもかかわらず、日本の大手マスメディアは総じて、日本政府の資産に関する論評を控える傾向がある。正しく財政赤字を報じるには、負債だけでなく、資産の評価をすることが必要不可欠である。

実はある程度、その情報は出回っている。日本政府の有する資産は、金融債権が中心であり、十分回収可能なものが多い。アメリカ国債は簡単には売れないであろうが、立派な金融資産であることは間違いない。

それだけではない。その資産のうちには、いわゆる貸出金がある。相手先は、政府系の団体が大半であり、仮にその貸出金を回収すれば潰れてしまうような団体でもある。しかし、回収は不可能ではないはずである。

問題は、それらの政府系の団体は、そのほとんどが官僚、特にキャリア官僚OBの天下り先であることだ。これらの団体から貸出金を回収してしまうと、官僚OBたちの天下り先が大きく減ってしまう。貰えるはずの、高額な退職金ももらえなくなる。

だから、旧・大蔵省は日本政府の有する資産の公表は、可能な限り避けてきた。しかし、税収が先細ってくると、当の官僚たち、特に現職の官僚たちは、その資産を気にしない訳にはいかなくなった。

現在の財務省内部には、日本政府の有する資産に関する資料が、引出の奥に眠っているとされている。内部で作成した資料なので、それが外に漏れることはない。ないはずなのだが、根は生真面目な役人が多いだけに、その中身が部分的に漏れてきている。

私が小耳にはさんだ情報では、日本政府の負債マイナス資産、つまり正味の借金は、せいぜいマイナス200兆円だという。私としては、その資産の中味が分からない以上、怪しい情報だと判じざるを得ない。しかし、その情報の出どころは、どうみても霞が関内部からのものであり、まったくの嘘とは思えない。

情報としては胡散臭いが、要するに、財政赤字としては、日本政府の一年間の歳入の二倍程度であるようだ。これなら、大騒ぎするような規模ではないと思う。もちろん、財政赤字であることは、間違いないのも確かではあるけど。

しかし、この情報が大手のマスコミに出ることはない。なぜなら、大手のマスコミは、官庁に詰める記者クラブで配布される資料のみを根拠に報道するばかり。決して、その情報に反するような胡散臭い情報は、決して報道しない。厭らしいことにあくまで、マスコミ様自身の判断による自主規制でもある。

私としては、大手マスコミの報じる、増税の必要性の記事は、一切信用していない。あれは、大本営発表を垂れ流しているだけだと思うからだ。

性格のひねくれた私の邪推だけど、大手新聞が来る消費税の増税の際に、低減税率の適用を受けられる最大の理由は、大本営発表の広報担当であるからではないかと思うのですよね。


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