ヌマンタの書斎

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カラヤン帝国興亡史 中山佑介

2024-01-22 09:13:28 | 

白状すると、私の若い頃は大のクラシック嫌いであった。

嫌う明白な理由があった訳ではないのだが、なんとなく金持ちの道楽というか、お高くとまりやがってっといった僻み根性があったことは否定しない。

後年になり、クラシックと貴族社会のつながりを知り、私の僻みも故なきことではなかったと妙に安堵している。嫌いといいつつ、映画音楽などでは時折使われていたし、学校の行事でもサン・サーンスの「動物の謝肉祭」やオッフェンバックの「天国と地獄」は定番であったから、まったく知らないわけではなかった。

でもオーケストラの良しあしとか、指揮者による違いなんかはさっぱり分からないクラシック音痴である。そんな私でもヘルベルト・フォン・カラヤンの名前と容貌は知っていた。いや、知らない日本人は稀だと思う。いわばクラシックの顔と言ってもおかしくない存在感があった。

ただし、私は彼の音楽性に関してはまったく分からない。ベームやフルトヴェングラー、マーラーらと聞き比べても、その違いはもちろん音楽論自体を語る資格はないボンクラである。しかし、表題の書籍は面白かった。

カラヤンを芸術家としてではなく芸術を武器に世界に挑む事業家として描き出しているからこそ、私は本作を十二分に楽しめた。なかでも気になったのは、カラヤンが終生上司を持たなかったことだ。常に彼はトップであり、誰が相手であろうと常に上位に立って相手するその不器用ぶりが印象に残った。

唯我独尊を絵にかいたような人物だと思う。クラシックに無知な私でも、このような描き方をされると、なんとなくレコードやCDを聴いてみたくなるではないか。なんとも気持ちの良い読書でしたよ。


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