ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

ステルス戦闘機の限界

2024-05-24 08:57:06 | 社会・政治・一般

ステルス戦闘機は必要か。

現在、アメリカを筆頭にステルス戦闘機を保有する西側諸国が頭を悩ませているのが、このステルス戦闘機の有効性である。なかでもアメリカの悩みは深刻だ。

湾岸戦争でイラクを圧倒できたのは、ステルス戦闘機の活躍あってこそだ。イラクのレーダー網を掻い潜り、レーダー基地を攻撃し、対空ミサイル基地を潰し、制空権を握ったことでイラクを撃破できたのは歴史的事実である。

だがこの勝利の裏側でステルス戦闘機の弱点が見つかってしまったことは、最近まで知られていなかった。いや、空軍関係者は知っていたらしい。ただ、その対策が十分に見いだせず、そのために水面下での議論となっていたのが真相だ。

平和馬鹿が横行する日本では、戦闘とは武器を撃ち合うことだと誤認している人が多い。しかし、武器を撃たなくても戦闘は出来る。それが領空侵犯だ。冷戦時代からソ連は日本領空を頻繁に侵犯してきた。目的は在日米軍基地のレーダーの性能判定と、日本の戦闘機の疲弊だ。

日本の領空にソ連機が侵犯して来れば、航空自衛隊は戦闘機を緊急発進させる。いわゆるスクランブル発進であるが、これは戦闘機のエンジンに多大な無理を強いる。一般に戦闘機の寿命は、エンジンの使用可能年数である。多発するスクランブル発進は、自衛隊機の寿命を大幅に短くさせた。

一言で云えば、敵を疲弊させる効果が領空侵犯にはある。おかげで日本の防衛産業はエンジンのメンテナンスに追われ、意図せずに技術力を向上させた。この苦労が今のF3用のエンジン開発に活きたが、多大な被害を受けていたことも確かだ。

何故だか日本のマスコミ様は、この敵性国家の領空侵犯による被害には冷淡である。軍事知識の幼稚さ故に知らないのかもしれないが、おそらく反米反日には役立たない情報は、日本国民どもには知らせる必要がないとお考えてあらせるのかもしれない。

ところでイラクを巡って支援するロシア軍機が盛んにサウジ領空を侵犯し、そのたびにアメリカ空軍がスクランブル発進をしていた。かなり際どい接近もあったらしく、米露ともに神経をすり減らす戦場であった。ところが、ここで判明したのがアメリカ軍の最新戦闘機のステルス機能が無意味であったことだ。

すなわち領空侵犯するロシア機に対して「出ていけ」と威圧するスクランブル出撃では、相手に機体を見せねば意味がない。撃ち落とすならば相手がアメリカ軍戦闘機を認識する前にステルス機の最大の特徴である隠密性を活用してミサイル攻撃が出来る。

しかし相手を領空から追い出すためのスクランブル発進では、むしろステルス機能は邪魔でさえある。近接しないと、相手を威圧できない。そして戦闘機の出撃の過半はこのスクランブル発進なのだ。

それだけではない。ステルス戦闘機は、相手のレーダー波を無効化するために特殊な塗料を使用している。出撃を繰り返すことはエンジンの疲弊だけでなく、塗装のやり直しまでも必要とされる。この出費が馬鹿に出来ないほどの巨額であるらしい。

税金の無駄遣いにうるさいアメリカ議会からの指摘もさることながら、アメリカ国防省もこのステルス機のメンテナンス費用の増大に根を上げた。2024年、既に世界最強のステルス戦闘機であるF22が30機近く退役する。表向きは電子装備の老朽化だが、実際にはメンテナンス費用削減の一環であるらしい。

ステルス戦闘機は非常に強大な戦力ではあるが、決して万能兵器ではないことが明らかになってしまった。現在、日本の防衛省もそのことを踏まえて空軍戦力の整備を検討中だそうだ。高額な兵器のなかでも戦闘機はかなりの金食い虫である以上、今少し一般国民も税金の使途について関心を持つべきだと思いますよ。

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする