戦前の方がずっとマシであった。
実はここにこそスパイ天国の土壌がある。戦前、スパイを取り締まる警察として「特高警察」があった。尋問に名を借りた拷問で悪名高い組織である。日本では特に共産党系のスパイが、この特高警察により残酷な取り締まりを受けた。これは事実だと思う。
戦後GHQが特高警察を解体したのだが、多くの職員が公安警察へと転籍になった。しかし、戦後は共産党の躍進が強く、公安警察は人員、予算とも大きく制限され、かつ大衆の反感も強く煽られていたために冷戦が本格化してもなお、その強化が図られることはなかった。おかげでスパイ天国と日本はなった。
自民党内には、これを危惧する声は小さくはなかった。しかし、左派系が強い映画業界やTV局などは、反戦映画のなかに特高警察を戦前の悪の象徴的な存在として活用したため、本来担っていた外国のスパイの取り締まりはもちろん国内の重要な情報を守る職務にも支障をきたす惨状であった。
当然に旧ソ連や共産シナは、そのような状況を利用して数多くのスパイを送り込み活用したことは言うまでもない。その代表的な事件が「東芝スパイ事件」であった。簡単に言えば、東芝の関連会社からソ連のスパイが精密加工技術を盗み出した。
その結果、ソ連の潜水艦のスクリュー音が劇的に小さくなった。アメリカ海軍の対ソ連防衛システムは大幅な改善を必要とし、それにかかった予算は数千万ドルだと云われている。この間抜けな同盟国の醜態に激怒したアメリカは、日本の政治家、外交官、霞が関のエリート官僚たちを締め上げて、日本国内に対スパイ法を作ることを確約させたらしい。
プライドだけは異常に高いエリート官僚たちは抵抗したらしいが、自民党の政治家たちはビビッてこの内政干渉とも云えるアメリカの横暴に応じた。それが特定秘密保護法である。興味深いことに最初の原案は民主党政権に置いて検討されている。しかし実際に法制化したのは第二次安倍政権の時であった。
ちなみに既に野党に落ちていた民主党は、対案を出したが、中身はだいぶ骨抜きしたものだった。代わって日弁連や左派系のジャーナリストたちが反対運動を繰り広げたが、思いの外支持を得られず。また幾度となくなされた裁判においても、特定秘密保護法が違憲だとされることはなかった。
まぁあの方々は、平和を守る為には何が必要かが分かっていない。戦争は一国では出来ない。必ず相手が要る以上、その相手に見合った軍備が必要であり、その情報を入手するためにもスパイ行為は必要不可欠である。
多分、スパイ行為というと怪しい違法行為を想像する人がけっこういると思うが、それこそ日本人の軍事知識が欠落している証拠である。例えば戦争をするためには武器弾薬だけでなく食料や水も必要不可欠である。それを前線近くに運ぶには、大規模な鉄道や船舶による運搬が必要となる。
これは故・長谷川慶太郎がその著作で述べ、また防衛庁(当時)相手の講演でも言っていたことだが、アフガン戦争の直前、ソ連の鉄道の運行スケジュールが大幅に変更されたことから、アフガン侵攻前にソ連軍のアフガン侵攻を日本の商社は予測していたという。
別にスパイを送り込んだわけでなく、公表された情報からでも相手国の軍事情報は入手できる。情報を適切に使えば、戦争を予測することも出来るし、戦争を回避することも出来る。これは相手国にも言えることで、仮想敵国の情報を入手することは必要な行為である。
鉄道の運行スケジュールなどは致し方ないが、軍事上の機密情報は守る法制度が必要なのは当然のこと。情報の入手方法は時代により、技術の変化によりいくらでも変わる。それに応じて機密情報を守る法制度も変えなくてはならない。まったく簡単な理屈だと思う。
しかし、日本国内には軍事情報には目を閉ざしていればよい。それよりも隠さねばならない軍事上の機密事項があることがおかしいと主張する妙な人たちがいる。脳内お花畑で平和の舞いに酔い痴れているのだろうけど、お花畑の裏で鋭い牙をもって飢えた野獣がいることには気が付かない。いや、気が付きたくないのだろう。
いい加減、日本でも軍事学を大学の一般教養のカリキュラムに入れ、公務員試験の範囲に含めた方が良いと思いますね。