ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

ベイマックス

2014-12-26 12:58:00 | 映画

ムクムクじゃダメなのかなァ~

子供の頃、犬を飼っていたので毛皮のあのムクムク感が好きなのだ。あの温かいムクムクを肌に感じる幸せは、忘れがたく脳裏に刻まれている。これは、世界共通の感覚だと思っている。

もっとも中には、手足の肉球の感触のほうが好きな人も少なくないのは知っている。好き嫌いなんて、人それぞれだ。

ところで表題の映画だが、亡き兄が創った介護ロボットのベイマックスは、空気で膨らませたフカフカの感触が人を癒す。兄を喪った傷心から立ち直れない主人公を癒そうと、ベイマックスは温かく包み込む。

それに苛立ちさえ感じる主人公だが、ベイマックスのユニークな動きに失笑しつつも、いつしか癒される。でも本当のところ、まだまだ傷心から立ち直れずにいる。

その傷心を本当に癒したのは・・・

ネタばれになるから書かないが、悪くないシナリオだと思った。子供も大人も楽しめる佳作に仕上がっている。

私がこの映画を観て思い出したのは、中学の時の京都への修学旅行だった。大徳寺の住職からの講話で、左手が凍てついているのなら、その凍てついた左手で右手を温めろと云われたことだ。

一瞬、逆ではないかと思ったが、実はそうではない。凍てついた左手で温めようと動かすからこそ、その左手も自然に温まる。痛い足を引きずるのではなく、痛い足から第一歩を踏み出すことこそが、足を回復させることに繋がる。

そのことを痛感したのは、山での厳しい経験だった。氷雨と強風が吹き荒れる11月末の奥多摩登山だった。本来なら子供から老人までもが楽しめるハイキングコースである。

しかし、氷雨が体温を奪い、強風が心まで凍てつかせる。思わず岩陰に避難して、膝を抱えて座り込みたいほどの寒さ。だが見渡すと、下級生が青い顔をして震えている。

ここで私が弱った姿をみせたら、誰が下級生を無事下山させるのか。思い出したのは、高校一年生の頃、厳しい場面になると先頭に立ち、誰よりも小まめに動いて、私たちの世話をしてくれた先輩たちの姿であった。このパーティで上級生は私一人。私が動かねば、誰がやる。

私は敢えて先頭に立ち、「俺の後ろを付いてこい」と命じて、冷たい雨と強風のなかに飛び出した。先頭に立てば誰よりも雨に濡れ、辛い風にさらされる一番辛いポジションである。

だが、不思議なことに敢えて先頭に立ったことで、心は燃え上がり寒さを恐れなくなった。身体はびしょ濡れであり、寒さは体を芯から凍らせたが、気持ちの燃え上がりが寒さを感じさせなかった。

気が付けば安全な林道であり、国道は眼下に見えていた。バス停に着くと、冷えた体をものともせず、お湯を沸かし、お茶を振る舞い、下級生を元気づける。無我夢中であったので、疲れさえ感じることはなかった。

WV部はけっこう厳しいクラブなので、途中で退部する者も少なくない。でも、この時の下級生たちは一人も止めず、卒業するまでクラブを率いてくれた。

私はリーダーシップには乏しいし、個人的な魅力で人を惹きつける才にも欠けている。あの時まで、私は下級生からリーダーとして認められていないのではないかと内心疑っていた。自信がなかったのだ。でも、あの時必死で先頭にたったことで、彼ら下級生から認められたのだと思っている。

そして、彼らもまた上級生になり、リーダーとなったのならば困難な時ほど先頭に立ってくれると信じている。

映画館を後にしながら思うのは、傷心を癒すのは他者からの慰めではなく、自らが他人を癒すことであることだ。ほんと、悪くない映画ですよ。年末年始、機会がありましたら是非どうぞ

コメント (13)
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