ヌマンタの書斎

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配偶者控除に思うこと

2014-05-02 13:54:00 | 経済・金融・税制

日本における生活習慣や、慣行事例を明文化したものが民法である。

その原点は、明治維新後、欧米に負けぬ近代国家であることを示そうとしたことにある。明治政府は民法を制定するにあたり、フランスのナポレオン法典を強く意識して法令を編纂している。

ぶっちゃけ、そのまま末オてしまったのが実情である。あまりに乱暴なやり方なので、明治政府に雇われたフランス人法学者は反対したが、意に介せずに民法を施行してしまった。

凄いのはここからで、帝国大学法学部を中心に長い時間をかけて日本の実情に合うように法改正を繰り返し、それでも足りないところは裁判による判例集といった形で補足している。

ここで改めてナポレオン法典における家族の在り方を捉えてみると、非常に興味深い。基本は夫婦とその子供2人を想定しており、夫は外で働き(あるいは兵士として戦い)、妻は家庭を守ることが無意識のうちに前提となっている。

これは市民兵を中心に作られた共和国家の理想に適うものであり、家族を一単位として社会を構成するものとしている。この考えは、富国強兵を目指す日本政府にとっても望ましい形であった。

当然に日本でも家族を一単位として考えている。この考えがあってこそ、税法上の配偶者控除が意味を持つ。つまり、日本の所得税法は、一個人に対する課税ではなく、一家族に対する課税を前提としている。

だが、果たして今日の日本で家族を一単位として課税することが適切だと云えるだろうか。

少子高齢化を迎え、今後ますます労働力の不足が社会問題と化している。そうなると、専業主婦だって社会を円滑に運営するための貴重な労働力として活用したい。その時に困るのが、いわゆる配偶者控除の壁である。

所得税法では年収103万円までは非課税とされる。これは収入103万円マイナス給与所得控除65万円=38万円(所得金額)となり、ここから38万円の基礎控除額を引くと課税所得は0円という理屈になる。

ちなみに、給与所得控除65万円と基礎控除38万円の合計103万円が、日本憲法でいうところの「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を保証しているそうである。年収103万円でそれが可能かどうか、裁判所は口を濁しているが、財務省は可能であると判断しているし、それを問題視する国会議員がいないのも現実である。

それはともかく、実際上の配偶者控除の壁は、実は103万円ではなく130万円である。これは社会保険の壁でもある。すなわち年収130万円以上毎年稼ぐようになると、国民健康保険及び国民年金に加入しなければならず、配偶者として被保険者となることが出来なくなる。

これが実は一番の壁となる。なにせ国民健保と年金を払うとなれば、年間で30万近い出費となる。私に言わせれば、年収180万程度は稼がねば、とても払い切れるものではない。つまり月収15万円以上稼がねば、払いきれない。

事実、これが嫌で年収103万円を超えないように、特に130万円を超えないように注意して働くパートさんは非常に多い。雇用する側からすると、現在の若者が労働力として頼りにならないので、主婦のパートは極めて貴重な戦力である。

とりわけ優秀な方にはパートといわず、正社員として登用したいのが本音だ。だが、中途半端な給与では、むしろ負担を個人の負担を増やしてしまい、正社員としての魅力が減じてしまう。

少子高齢化を迎えた日本では、主婦といえども貴重な労働力である。政府はいい加減、税制と社会保険制度を整合させて、一人一人が働きやすい環境を構築すべきだと思います。

コメント (2)
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