のろや

善男善女の皆様方、美術館へ行こうではありませんか。

『夢二とともに』展

2011-12-17 | 展覧会
選挙やらヘルペスやらドライアイやら寒さやらルパンやら世の中で起きているもろもろのことやらで気力がすかり萎えきっているうちに師走も半ばとなってしまいました。
王国をやるから馬をくれと言ったのはリチャード三世。
王国も馬もいらないからやる気をくださいと言うのはのろ。
ちなみに馬と王国とどっちかくれるんなら馬がいいですね。
もれなくセシルとウォルシンガムがついてくるんなら王国もらってあげてもいいけど。

それはさておき
京都国立近代美術館で開催中の川西英コレクション収蔵記念展 夢二とともにへ行ってまいりました。

竹久夢二がそんなに好きではないのろではございます。
それはひとえにあの、のっぺりとした瓜実顔に下まつ毛、眉間の広い下がり眉に厚めのおちょぼ口、そして猫背になで肩で「なよなよ」を絵に描いたようなポーズの、いわゆる夢二風美人と呼ばれる人物像にワタクシが魅力を感じないからというだけであって、つまりは単に好みの問題でございます。
まあ、のろごときが好こうと好くまいと、竹久夢二が稀代のデザイナーであることには変わりがございません。本展には冊子の表紙を飾るイラストから油彩画、夢二デザインの装丁や千代紙、はてはうちわに風呂敷まで、個人でよくぞこれだけ集めたものだと感心するばかりのものものが並んでおりました。
上記の理由もあって、ワタクシ絵画作品にはそれほど心惹かれませんでしたが、装丁やイラストに見られる配色、モチーフのデザイン的処理、空間の取り方など、それはもうみごとでございまして、つくづくと見入ってしまいました。

また夢二以外の同時代の作家による作品も多く展示されており、川西氏の確かな審美眼とコレクター魂とを伺わせます。安井曾太郎の版画なんてワタクシ初めて見ました。
川上澄生、山本鼎が見られたのも嬉しいことでございましたが、中でも圧巻の素晴らしさであったのが芹沢銈介の手によるカレンダー(1946年)でございます。
こちら↓の29番をクリックすると全月の絵柄を見ることができます。
芹沢けい介美術工芸館

隅々まで気の入った装飾性と手仕事の温かみ、月を示す漢数字が周囲の装飾の中に組み込まれているという洒落っ気、芹沢独特の鮮やかでありながらも落ちついた色彩。日付を表すアラビア数字のタイポグラフィもいちいち素晴らしい。デザインに重きを置きすぎて見にくいカレンダーというのはままございますけれども、こんなにも装飾に埋めつくされておりながらなお、たいへん見やすく、目に心地よく、じっくり鑑賞するのにも耐える、それどころかいつまで見ていても見飽きないカレンダーというのはすごいではございませんか。生活とともにある美、という民藝運動の理念の、最も美しい結実を見るようでございました。

本展は川西コレクション”収蔵記念展”ということですから、今回展示された品々は今後も常設展示室の方でお目にかかる機会がありましょう。ありがたいことでございます。
京都近美は本展終了後、来年4月まで改修工事のため休館するとのこと。この次に足を運ぶ時には見慣れた常設展示室も様変わりしているかもしれません。


ああ、たったこれだけのことを書くのに何だってこんなにかかるかな。
気力はないし能力もないしこんなのが王国なんかもらってどうするのかって。
有能な家臣たちに政治を任せて自分は趣味に明け暮れるに決まってるじゃないですか。
国庫をすっからかんにしたすえに徽宗さんかルートヴィヒ2世みたいな末路を辿ること必至ですな。
やっぱり馬がいいや。