のろや

善男善女の皆様方、美術館へ行こうではありませんか。

『パプリカ』

2006-12-14 | 映画
パプリカ - Paprika - を観てまいりました。

いやっ
これは

めちゃめちゃ面白うございました。

ストーリーはリンク先(↑タイトル)の公式サイトをご覧いただくとして。
まずもって特筆すべきは 映 像 美 でございます。
CG技術がかくも発達しております昨今、「夢のような映像」は決してアニメーションの専売特許とは申せませんが
実写CGが往々にして、中途半端に現実的な、想像力をげんなりさせるような「夢の世界」を展開してしまうのに対し
本作の映像は、観る者をめくるめく映像に引き込む、力強い美しさを放っております。

ワタクシたちが夢を見ている時のあの感覚、即ち
「何でもアリ」なのにままならない、過去・現在・清・濁・美・醜・陰・陽のごった混ぜになった
映像がスクリーン上にみごとなまでに鮮烈に構築されております。
夢の女・パプリカの変幻自在ぶりは実に爽快でございますし
全速力で走っているのにちっとも前に進まない、とか
高い所から落ちる、とか
自分の視点と他者の視点がいつの間にかすり替わっている、といった
悪夢の中でおなじみの光景が、華麗な色彩を伴って展開されるさまは
大画面で見る価値 大あり でございます。

それに加えて、映像とベストマッチの疾走感あふるる音楽には
見ていて何度も鳥肌が立ちました。いや、ほんとに。

ジェットコースター的なストーリー展開ながらもスジはしっかり通っておりまして
幾分のナゾと、幾人かのかわいそうな人は残されるものの、
登場人物たちが各々抱えるストーリーは、エンディングにおいて収まるべき所にきちんと収まります。

そんなわけで一日中ぐずついたお天気の本日においても
観賞後は5月の青空のごとき爽快感がのろの心を満たしたのでございました。


印象的なセリフがいくつかございましたが
とりわけのろの心に残ったのは、悪役某氏(とってもかわいそうな人なのですが)の放った、
「トラウマでも喰らえ!!」 という言葉でございました。
これでも喰らえ、というニュアンスでございます。
本作の大筋は、夢を共有し、使いようによっては他人の夢をコントロールし得るマシンをめぐる戦いでございまして
共有される夢の中で、いかに主導権を握るかがカギなんでございます。
このセリフも夢の中で、追われる悪役某氏が、追う善玉:粉川刑事に向かって投げつける言葉です。

トラウマでも喰らえ。

この言葉とともに、刑事のトラウマ体験を呼び起こす映像が、実際に、眼前に、展開されるのです。
おお、なんとも恐ろしいことではございませんか。
のろが追手だったなら、このセリフ聞いただけできびすを翻してスタコラ逃げ出すこってございましょう。
トラウマに悩まされ、不安神経症を患ってパプリカの治療を受けてきた粉川刑事が
この土壇場でどんな行動に出たか?
それは映画を観てのお楽しみということで。


原作を既にお読みの方は、あるいはストーリーのはしょり方やキャラクター造形に不満をお持ちかもしれませんが
のろは原作を読んでおりませんので、映画作品としておおいに楽しめました。

京都ではみなみ会館にて上映中。
ここにしては珍しい長期間上映にて、年を越してもやっております。
行って損はございません。
皆様、年末年始のエンターテイメントに、ぜひお運びくださいまし。
そしてこの愛すべきミニシアターにどうぞお金を落としてあげてくださいまし。
ここが無くなったら泣きますよのろは。いや、ほんとに。