読書な日々

読書をはじめとする日々の雑感

『未完の敗戦』

2022年09月25日 | 評論
山崎雅弘『未完の敗戦』(集英社新書、2022年)

日本とドイツ。どちらもファシズムによって自国民と周辺の国々を戦争の惨禍に巻き込んだという共通点を持つが、戦後の両国の歩みは正反対だと言っていい。

ドイツはナチズムときっぱり手を切り、ナチ思想の復活を許さない教育を進めている。そして現在の政治家たちも多くが手を切っている。

日本の支配層の精神構造が「大日本帝国思想」にあることは、コロナ問題でいかんなく発揮された。太平洋戦争の敗戦で日本は変わったと思っているのなら大間違いだ。何も変わっていない。いまだにコロナ禍に「竹槍」(精神論)「大本営発表」(嘘八百の情報ばかり)

日本は、戦後すぐは大日本帝国思想と手を切る方向へ進んだが、冷戦によるアメリカの方針転換によって、大日本帝国思想が復活を始めて、現在では支配層を牛耳っている。

こう考えれば、一見すると矛盾しているように見える、韓国発祥の統一教会と深く癒着をしながら、慰安婦問題・徴用工問題で韓国を否定するのも、コロナ禍の中でのオリンピック強行とか非正規雇用増大とかのように国民を虫けらのように扱うのも、太平洋戦争での軍人たちの悲惨な死(病死が半分)や若者たちを特攻で死なせたのも、すべて根っこは同じだということがわかる。

では対米従属は?大日本帝国はアメリカを敵として戦ったのではないのか?これについては内田樹が『「意地悪」化する日本』の中で、こう説明している。内田は、敗戦による日本の支配者たちは、国家戦略として、アメリカの属国になって忠義を尽くしアメリカから「信頼できる同盟国」という承認を獲得することができれば、アメリカから「自立のお許し」が得られるかもしれない、その日までがんばって従属しようという選択をしたという。まさにアメリカを支配者とする忠義国家になるという選択だという。

私たちは支配層を冷笑しているだけでは日本を変えることはできない。行動によって変えていくしかない。

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