中村敦夫『チェンマイの首』(講談社、1983年)
朝日新聞に私の履歴書みたいなコーナーがあって、著名人の履歴書をインタビュー形式で連載しているのだが、最近は中村敦夫が登場している。
もちろん私のような世代にとっては中村敦夫は「木枯し紋次郎」である。その後国会議員にもなったらしいが、そのあたりのことはあまり詳しくなかった。
これを読むと、「木枯し紋次郎」のドラマで大成功してから、しばらくして、東南アジアを旅行して、小説を書こうと取り組んだという話を知った。その第一作がこの『チェンマイの首』という作品だ。
一度でも小説を書こうとしたことのある人なら分かるとおもうが、自分が知らない世界のことをリアルに書くのはとてもむずかしい。言葉が出てこないものだ。
しかし、中村敦夫の第一作は、彼がどれほどの回数タイを見聞きしたのか知らないが、じつにリアルに描かれている。彼自身がハードボイルド小説の大ファンでよく読んでいたという経験も功を奏しているのかもしれないが、やはり付け焼き刃ではなくて、子供の頃から身についたものなのだろう。それくらいの筆力を持っている。
そうした筆力のほかにも、タイの事情に詳しいので驚いた。東南アジアで唯一立憲王政をとっているタイは比較的安定した落ち着いた国だとばかり思っていたのだが、東南アジア諸国の例にもれず貧富の格差が大きく、しかも軍部が支配しているという点で、似たようなもののようだ。それに学生運動がこんなに過激だということも知らなかった。
あまりに古い本なので図書館でも書庫入りしていたが、こうして読むことができるのは図書館あればこそだ。
『チェンマイの首』 (講談社文庫)へはこちらをクリック
朝日新聞に私の履歴書みたいなコーナーがあって、著名人の履歴書をインタビュー形式で連載しているのだが、最近は中村敦夫が登場している。
もちろん私のような世代にとっては中村敦夫は「木枯し紋次郎」である。その後国会議員にもなったらしいが、そのあたりのことはあまり詳しくなかった。
これを読むと、「木枯し紋次郎」のドラマで大成功してから、しばらくして、東南アジアを旅行して、小説を書こうと取り組んだという話を知った。その第一作がこの『チェンマイの首』という作品だ。
一度でも小説を書こうとしたことのある人なら分かるとおもうが、自分が知らない世界のことをリアルに書くのはとてもむずかしい。言葉が出てこないものだ。
しかし、中村敦夫の第一作は、彼がどれほどの回数タイを見聞きしたのか知らないが、じつにリアルに描かれている。彼自身がハードボイルド小説の大ファンでよく読んでいたという経験も功を奏しているのかもしれないが、やはり付け焼き刃ではなくて、子供の頃から身についたものなのだろう。それくらいの筆力を持っている。
そうした筆力のほかにも、タイの事情に詳しいので驚いた。東南アジアで唯一立憲王政をとっているタイは比較的安定した落ち着いた国だとばかり思っていたのだが、東南アジア諸国の例にもれず貧富の格差が大きく、しかも軍部が支配しているという点で、似たようなもののようだ。それに学生運動がこんなに過激だということも知らなかった。
あまりに古い本なので図書館でも書庫入りしていたが、こうして読むことができるのは図書館あればこそだ。
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