読書な日々

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『海翔ける白鳥・ヤマトタケルの景行朝』

2018年12月01日 | 評論
小林惠子『海翔ける白鳥・ヤマトタケルの景行朝』(現代思潮新社、2011年)

小林惠子の日本古代史シリーズ第二巻である。今回は四世紀が取り上げられている。崇神、垂仁、景行、成務、仲哀、応神がこの時期の天皇になる。

しかし記述されているのは、ほとんど中国の記述担っている。というのは、中国の史書でこの時期の日本(倭国)のことを記述しているものがほとんどないために、日本の支配者がどんなふうになっていたのかを知るためには、中国から半島にかけての状況を中国の史書を使って知るしかないというように説明されている。

そして上に挙げた天皇たちはみんな、半島の百済の支配者であることがほとんどで、中国の支配者たちの戦いの影響を受けて、戦争に負けて、列島にやってきて、列島の支配者になったり、そこで生まれ育ったが、中国や半島からの呼びかけに応じて、半島に出ていってそこのどれかの国の王になったりしている。

具体的に見ていこう。神武は高句麗の東川王と同一人物だし、懿徳は高句麗の西川王だ。通常欠史八代と呼ばれている時期の天皇は、すべて高句麗の劉氏系列の支配者である。天之日矛は日本にやってきた美川王で、彼は北九州を制圧したあと、大和に来て、崇神となる。

ここで劉氏系列の支配者は、半島で力を持つようになった慕容氏の系列に列島を奪われる。垂仁は慕容仁のことで、慕容儁ことヤマトタケルが景行天皇であるという。この慕容氏系列は成務、仲哀で終わり、その後神功皇后の時代になる。

武内宿禰とは百済の近仇首王のことで、この時期は西南部を神功と武内宿禰が、近畿地方は仲哀の息子の忍熊が支配していたという。応神も百済の王である。

登場人物がとても多いので、誰が誰やらわけが分からないのが本音だが、中国に史書からここまで読み取った著者の力に感服する。

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