読書な日々

読書をはじめとする日々の雑感

『下妻物語』

2009年03月17日 | 映画
『下妻物語』(原作:嶽本野ばら、監督:中島哲也、2004年)

一度見てみたいと思っていた『下妻物語』をやっとみれた。たまたまJ-COMでやっていたのだ。物語はおくとして、配役がすばらしい。深田恭子の竜ヶ崎桃子、土屋アンナの白百合いちご、桃子の父親に宮迫博之、母親が篠原涼子、祖母が樹木希林、その他、岡田義徳やまちゃまちゃが脇をかためる。一角獣の竜二なんてのを阿部サダヲがやっているし、八百屋とジャスコの店員役をとぼけた顔の荒川良々がやっている。

関西のファッションをジャージ一色で説明する冒頭のシーンもすごい。かつてはジーンズもそんな風に肉体労働者のはきものだったから、ジーンズでは名の知れたレストランなどでは「入店お断り」だったのが、今ではれっきとしたファッションの一部で、プレミアのつくようなオールド・ジーンズだってあるくらいだ。だからジャージだっていずれはこの冒頭シーンのように、ジャスコで買うようなものからプレミアがつくようなものまででてくるかもしれない。そんなことを思わせる冒頭シーンだった。すごい!

ロリータファッションっていうのだろうか、あの桃子が着ているような服。ときおりなんば駅なんかでみかけるが、さすがに浮いている。でも桃子は自分がフランスのロココ時代の生まれ変わりみたいに思っていて、自分が最高と思える服をきることで、その服にみあった人間になるように努力しているわけで、それは一つの信念、生き方であるからして、素晴らしいことのように思う。別に人に迷惑をかけているわけではなく、自分の信念とするファッションを着て、自分を高めていこうとする姿勢は、まさに、現代社会ではマイナーかもしれないが、一つのしっかりした生き方をもっている若者をつねに提示してきた嶽本野ばらならの物語だろう。煙草を吸って人に迷惑をかけておきながら、「禁煙ファシズム」などと開き直る御仁たちよりはよほど人間的に優れている。

一方、ヤンキーの白百合いちごは、ちょっと特異である。ヤンキーがみんなそういうわけではないだろうが、たんに特攻服に身を固めてにぎやかなバイクで徒党を組んで走り回っているというだけではなく、いちごの場合は、いじめが原因で、自分をどうしていいかわからないでいた頃に暴走族の亜樹美にあこがれてレディースの「舗爾威帝劉」に入るが、この族は一緒に群れて走るだけで、上部組織だとかの上下関係なんかをもたないことで、ほかの族とはちがっていた。いちごはここで自分を解放することができたのであり、一般に社会の嫌われ者と思われている暴走族にも筋をとおす友だち思いの人間もいるということを描こうとしているように思のだが、どうだろうか。

いちごが亜樹美が引退した族から抜けたいと言い出したために、「ケジメ」をつけるとして集団リンチにあう場面に桃子が助けに行った場面で、あのおとなしいだけの桃子が「本領発揮?」みたいに族のメンバーをやっつけるのは、この二人がまるで入れ替わったかのような印象をもつが、だいたい竜ヶ崎というようないかにもな名前といちごというこれまた暴走族とは相容れない名前がしからしむところだろう。

原作は読んでいないのだが、映画の方はほんとうによくできていたと感心した。

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