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仏教ライフを考える西原祐治のブログです

うつ病と人間の進化

2023年03月04日 | 現代の病理

『ホモ・サピエンスの15万年―連続体の人類生態史』(古澤拓郎著)からメモ代わりに、2つ転載します。

 

 うつ病と人間の進化

 

 うつ病は、生物としての進化が背景にあったことが指犒されている。NHKが2013年10月20日に放送した『病の起源第3集うつ病』という番組と、その書籍はさまざまな視点からこのことに迫った。番組においては、脳にある扁桃体という部分が、ストレスに対して反応しやすくなることが、うつ病を発症するメカニズムであるとした。そして、実験的に外敵の恐怖などのストレスをうけ続けたゼブラフィッシュが、うつ病のような症状を引き起こしたことを紹介して、うつ病の存在は生物進化のかなり初期に罹るることも指謫した。また長期間仲間か遊離されたチンパンジーにも、うつ病のような症状がみられた例も出された。

 そのうえで、同番組では東アフリカのタンザニアに暮らす狩猟採集民ハッザにはうつ病が無いことに着目した。ハッザも恐怖やストレスがないわけではないが、うつ病にならないのは平等社会であることが鍵であるという。欧米や東アジアのルーツである農業文明では、社会が発展するとともに支配者の下で大きな共同事業を行うようになり、そこで支配するものとされるものとの格差が生み出され、そして階層が低い人々はストレスを受け続けることになり、うつ病になりやすくなったという。ただし、たとえ社会階層が高くても、今度は地位を守るためにストレスを受け続けることになる。そしてもし、こうした社会階層の存在が現代のうつ病に繋がっているとすると、うつ病を治療するという時には高度な医学的処置を施すという選択肢だけでなく、平等社会に暮らすことが何よりの治療になるのではないか、という。そこで喬組では、平等な社会関係で生活し、狩猟採集社会のように適度な運勍・食生活・思考法・睡眠によって暮らすことが、大きな治療効果を発揮した例も紹介した。私の調査していたソロモン諸島の村は、狩猟採集民ではなく漁撈採集と小規模農耕の社会であるが、そこではうつ病の人は稀であり、私自身心身ともに癒やされたようにお感じて暮らしていた経験からすると、こういった説には同意するところがある。

 

 

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