『中外日報』(2023.3.8日号)、真宗大谷派の情報コーナに「どうする家康」のドラマについて記されていました。
NHKで放送中の大河ドラマ「どうする家康」の第7~9話は、愛知県安城市の本證寺を主な舞台に三河一向一揆と対峙する徳川家康の苦闘を描く。3話分の制作には近松誉本廟部長や安藤弥・同朋大教授が時代考証に関わった。このうち近松部長は本證寺の仏具などのしつらえや、住職の空誓らの所作・勤行の指導、衣体の考証など作を担当した。
同部長によれば、真宗の装束は南北朝時代の絵詞や桃山時代の絵像などは難しかったという。当時の読経の実態もほぼ不明。ドラマ中の正信偈の読経は大谷派の節を用いたが、本願寺の東西立前だったことも踏まえ、大谷派の独自性があまり出ない、抑揚の少ない真読の読法にした。
ドラマでは本證寺の境内で歩き巫女の千代(古川琴音)らが妖艶に踊るシーンがある。これは制サイドのオリジナルの設定で、歴史的事実として一向一揆の拠点でそうした習俗が披露されたのかは「疑わしい」が、散華道の作法のテイストを加えるようアドバイスした。ただ、歩き巫女の舞や門徒衆の食事などのシーンと、仏事とを明確に区別するため、前者のシーンは本證寺の本尊のしつらえを外して撮影した。
ちなみに空誓が説法や勤行をするシーンに近松部長と安藤教授、宗派式務所の堂衆2人の計4人が出演した。同部長は「当初は私かエキストラに勤行の指導をするだけの予定だったが、出演者の方々が多忙で間に合わなかったため4人で出演することになった」と説明。このほか放送では式務所で録音した読経の声も使用されたそうだ。近松部長は2020年の人河ドラマ「麒麟がくる」で、斎藤道三と織田信長が面会する「聖徳寺の会見」の監修も担当した。「この時は『道三と信長が会見する峻厳な雰囲気を』というくらいの制作側からの指示や要望だったので、比較的自由にできた」
一方「今回は一向一揆の拠点を自由や活気に満ちた場や網野善彦的なアジールとして表現したいとの制作側のコンセプトがかなり明確だった。それを踏まえて可能な限りできることを考えた」と話した。