『神話研究の最先端』(笠間書院2022.12.5刊),
分厚い本ですが、ほとんど興味がないものでした。
仏教研究の方法と神話
師 茂樹
一方で、仏教が様々な説話、神話、伝承の宝庫であることもまた広く知れており、盛んに研究されている。インドで仏教が創始されて以後、仏弟子たちによって、ブッダの偉大さを示すため、様々な神話的エピソードが彩られた仏伝や前生譚(ジャータカ)が作られた。また経典では、難解な教理を伝えるために様々な譬え話が用いられているが、『百偸経』など、譬え話を用いた説法を集めたアンソロジーも作られている。そのなかには、神話的な内容のものも少なくない。ブッダ入滅後、仏教教団は部派に分裂するが、各部派はそれぞれに
経を保持していたので、そのなかに説かれる神話的エピソードなども部派ごとに少しずつ変化していった。中には正量部のように「あと七百年で人類の大半が死滅する」といった破局の意識を強く持つ部派など、独自の世界観を作り出すグループも現れた。また、部派仏教に続いて出現した大乗経典では、ブッダが様々な奇跡を起こす超人として描かれ、多様な譬喩が用いられた。仏典の漢訳を通じて東アジア(中国・朝鮮半島・日本)に仏教が伝えられると、そこでも多くの神話・説話が作られた。高僧の伝記(高僧伝)のなかには、仏伝と同様に神秘的、奇跡的な話が多く収録され、『大唐西域』のような地誌にもインドにあったという様々な伝承が収録されている。日本においても『日本霊異記』『今昔物語集』のような仏教説話集が作られた。