法話メモ帳より
『心にしみた忘れられない言葉』(1999/2/1・岐阜県笠原町編集)
競馬で大穴が当たったんや、大学行かしたるわ
私が高校生のとき、父は手形の保証人となり、多額の負債を背負った。友情を重んじる父が友人に裹切られたのだ。家までも手放した父は、唯一の楽しみだった競馬もやめた。
私は大学受験を控えていたが、状況を考えると、とても大学へなど行けない。就職して借金返済を手伝おうと決心していた。
そんなある夜、酒の飲めない父が珍しく酔って帰ってきた。
「競馬で大穴が当たったんや、大学行かしたるわ」
照れ屋な父の精一杯の嘘だった。息子にだけは迷惑をかけたくないという、意地があったのだろう。
その夜、私は泣いた。
、 加藤公平(32)大阪府
奈保子の為ならいくらでも頭をさげてやる、地につくまで‥
高校三年生の春、退部届けを出しました。前の日に、いやそうに練習をしていたということで、けられ、なぐられ、それも二十回以上‥、もう限界でした。
「オマエは、ソフトで入学したんだ、学校も辞めろ」
いきおいで、「辞めます」といい、親が呼ばれました。母親は、あやまってばかりいました。父親は、「本人が辞めたいのなら辞めさせて下さい」と深く頭をさげていました。
車の中で父親が一言
「奈保子の為ならいくらでも頭をさげてやる、地につくまで…」
私は、二度と父親の頭をさげさせてたまるかと思い、声を出さずに泣きました。
無事に卒業でき、くいのない高校生活が送れました。