超進化アンチテーゼ

悲しい夜の向こう側へ

俺の道/エレファントカシマシ

2011-09-15 20:21:27 | 音楽(旧譜レビュー)






最近、エレファントカシマシの「俺の道」をよく聴いています。





このアルバムは、聴いてると言葉も支離滅裂だし
途中で意味もなく叫ぶし
なんだか非常に近づきにくいアルバムではあるんですけど、私自身整理されたものだとか
完璧に調和が取れた作品に対して「そうじゃねえだろ」って思うタイプの人間なんで
逆にこういうのが心地良かったり
聴いてて気分が良かったりするんですね。中でもこのアルバムは本当に傑作と言える出来栄えで。
本当に凄い曲しか入ってない、っていう。

じゃあどこが凄いのか・・・っていうと
このアルバムは強烈な自己否定のアルバムなんです。
自分アンチ。


【努力を忘れた男のナミダは汚い】 (季節はずれの男)

正にこのフレーズに尽きます。
満たされない毎日
つつがない生活
そこそこの暮らしで満足してる自分・・・いや、そこそこにも満たないかもしれない
そこは底辺かもしれない
勝手に自分はこういう人間なんだって決め込んで生きてるけど
じゃあそれで終わりなの?だとか
そっからどうするのお前だとか
このまま負け続けたまま生きてていいの?だとか・・・要はそういう事ですよね。
つまり勝負もしてないし
土俵にすら上がっていない、口を開けば自分は脆弱な人間だのなんのかんのの言い訳ばっかで
成長する気もないし
夢もなけりゃ
希望もない。
でも、そのままでいいの?だとか、アンタその程度の人間だったのか、とか
そんな感じの歌詞が延々と続くんですよ。
それはもう一種の拷問なんですけど
これよくよく歌詞を見てみると、ほぼパーソナルな内容っていうか
宮本浩次自身のアルバムって言うか
それ以上でもそれ以下でもない感じ?それ故に、その、すごくリアルなんです。ある意味そのまんまだから。
前述した「季節はずれの男」では一発屋のパロディ男って自分を罵ったり
このアルバムは当然売れてない時期のアルバムなんで
俺の出番なんて世間は望んじゃないんだって内容だったり、
でもそれでいいの?
勝負しないの?って自己に対する問いかけもいいかげん多くて
だからこそ、そこまで自分って人間に向き合ってるアルバムだからこそ
それが聴き手に飛び火してくる、っていうか
まあ自分も言ってしまえば勝負してない人間ですから(苦笑)そんなルサンチマンが
心の奥底にギュンギュンと迫ってきて、その・・・堪らない訳ですよ。
最早猛反省だとか
自己嫌悪の領域ですよね。このアルバムは。

そうやって猛烈にぶったたかれて初めて分かる事もあるというか
っていうか分かる事だらけというか
俺は勝負もしてないし
毎日いい加減に過ごしてるけど、本当にこれで良かったんだろうか?だとか
そんな風な事を聴いてるこっちも最終的には考えさせられて。
そう思うと凄いアルバムですよ。
タイプは違うけど神聖かまってちゃんみたいなものですよ。本当に日記に近い内容でもあるんですけど
そういったリアルな激情って確実に聴いてる人の心を打つものだと思ってるから。
甘えみたいなものを排除してますからね。
私自身も歳取って価値観も変わり
待ってればチャンスが来る~なんて微塵も思えなくなって来てる訳なんですが
だからこそ「努力を忘れた男のナミダは汚い」みたいな歌詞が身に沁み込む訳で。
何気に曲調がバラけてるんで
同じような歌詞でも違った感触で聴けるのがまたいいですね。
過度に自棄的な「ろくでなし」「どこへ?」から
【何も恐くない すごい表現力だ】って歌う「オレの中の宇宙」までレンジは幅広い
さっきまで自己否定しまくってたのに
いきなり「すごい表現力だ」って自己絶賛したり傍目から歌詞を眺めてると笑ってしまう作品でもあり
だからこそ人間くさくもあり。
エレカシと言えば雄大なボーカルのイメージもありますが
このアルバムではほぼ全曲暴力的っていうかめちゃくちゃに歌ってるので
その意味でも確実に際立っているアルバムでもあります。
最近自身に対して
「ふがいないな」って感じる瞬間も多くなってきただけに、余計にこのアルバムは沁みてきて
精神的に居た堪れない気持ちにもなるんですが
だからこそ素晴らしく、感受性のツボを大いに刺激してくれるアルバムでもあるんだな・・・と
ここ最近ずっと感じながら聴いているアルバムです。
一曲一曲のエネルギーが凄まじいので
濃ゆいロックを確実に体験できるんじゃないか、とも。






【「俺のせいなの?」「いやいやこういうものだ」 
  おい オマエもう一回 再生だ】 (どこへ?)

再生だ!(切実に)



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2 コメント

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Unknown (srpeed)
2011-09-15 21:00:22
なんとタイムリーな! 一昨日くらいに私も急にこのアルバムが聞きたくなって、ちょうど生命賛歌の雄たけびに震えていて、俺の道で歌われる切実さに憂いを感じていたところでした。本当にいいアルバムですよね。


>このアルバムは強烈な自己否定のアルバムなんです。

このアルバムを買ったのが確か高校一年生くらいで、なんとなくかっこいいなーくらいの気持ちしかなく。初めの頃はその良さをあまり分かっていませんでした。(今でも味わえているかは疑問ですが)
でも、上に書かれた言葉をはじめとする、西京さんのレビューが今なら分かるような気がします。このアルバムはぬるい自分に鞭打つように徹底した自己否定を歌っているのでしょうね。そのストイックさにハマっている次第です。ちなみに私はハロー人生の剥きだしの反骨心が一番好きです。


それと、西京さんのレビューに対する思いもまたストイックだなと感じています。本館だけではく別館での精力的な活動を見習って。私も一か月単位でも毎日更新を成し遂げることを頑張りたいと、エネルギーを貰っています! 
返信する
それはマジでタイムリーですね(笑)。 (西京BOY)
2011-09-16 14:29:31
srpeedさん毎回コメントどうもです!ありがたいです。


>一昨日くらいに私も急にこのアルバムが聞きたくなって、
>ちょうど生命賛歌の雄たけびに震えていて
それはちょうどいい話ですね。
あの曲も本当に好きな曲で、感情の滾り方が半端ないですよね。
聴いた当時はあの曲がかなり突出したイメージだったんですが
今聴くと「季節はずれの男」や「オレの中の宇宙」も相当共鳴出来る曲なんだなって感じられます。

いや、自分も今改めてハマってその魅力を本当に確認出来たのかな、って気分です。
記事にも書いているんですけど、最近私生活で自分に対してふがいないな、って感じる瞬間が
そんな自分に恥じる瞬間が多くなってきたんです。
そういう折になんとなしにこのアルバムを聴いたモンで、もう歌詞の内容に共鳴っていうか
それこそ大反省の勢いですよ。
自分の愚かさを認めることによって、逆に奮い立つ気持ちだとか
それじゃダメだろって思う気持ちだとか・・・。要はこのままじゃダメだって事ですよね。
そんな内容になっているので自然に心も刺激されたってのが事実ですね。
音楽ってタイミングでもあるんだな、って思いました。

>ちなみに私はハロー人生の剥きだしの反骨心が一番好きです。
「のれんに腕押し」ってフレーズが何気に好きなんです。
実際そう感じる出来事も多くてですね
それでも続けてやろうじゃねえか、と。そんな心意気も感じられる曲ですね。私も好きな曲です。


いやあ~ストイックかどうかは分かりませんけど
やっぱり作品っていうか表現が大好きなので・・・少しでもその輪郭を伝えられればな、って。
 別館の方はそうですね、毎日企画もあるのでそれなりにガス抜き感覚でやってますね。
もっと作品に対して騒ぎたい気持ちがあるのかもしれませんね。恐らくは。

srpeedさんも最近は苦心してらっしゃったみたいですけど
それでも頑張ってレビューを書いている姿勢にこちらこそ感動してますよ。嘘やお世辞じゃなく。
そんな姿勢も私にとっては刺激の一つですね。お互いに頑張っていきましょう!
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