超進化アンチテーゼ

悲しい夜の向こう側へ

Syrup16g全曲レビューその54「シーツ」

2012-09-14 06:27:43 | Syrup16g全曲レビュー






今回は、最近特に思い入れの深い楽曲です。「シーツ」です。
「scene through」「ハミングバード」も全面改訂したので併せてよろしくお願いします。







シーツ         アルバム「HELL-SEE」収録







痛み堪えて 痛み殺した
次第にMy Body's end


何かに対して「嫌だな」と思う気持ちだったり、「恥ずかしいな」と思う気持ちだったり
「悔しいな」って感じる瞬間だったり・・・それらは全て自分自身へのサインであって
痛みというのは堪えても殺してもいけない
受け入れるべきものなんですよね。
それが出来ないと
どんどん負の感情が溜まって行き、現実から目を背けるようになる
それで益々自分自身が芯から腐っていく、それが良いとか悪いとかではなく(責める意味合いがなく)
この曲はまずはそんな現状を認識させる所から始まる
決して最高とは言えない状況、
それでも夢を見てしまう人間の諦めきれない心情を描いた・・・
フラフラのメンタルでありながらも、まだ意地悪く一歩進もうとする姿勢を描いている
私個人にとってはそういう楽曲に思えて、だからこそ余計に聴いてて感情移入してしまう
身体の芯まで伝わってくるような淡々としながらも本質は熱い
そんな至高のバラッドに仕上がっている、と思います。

また歌い方が、非常にリアル・・・というか
そんな気分の時に正に歌ってたんだろうな、と想像してしまうくらい
歌詞そのまんまの空気感がよく出ていて
その意味でも聴いてて何の隔たりもなく歌に入り込める
説得力の強いボーカリゼイションになっているのがまた素晴らしい部分で。




シーツ 洗われてゆくよ
毎日交換
そこにあるのは微かな真っ白い影
眠ってたのは誰

昨日見たよ 夢で見たよ
このシーツに
刻まれた英雄を


誰でもある程度頑張ればやれちゃう簡単な作業の繰り返し
必死に頑張ったあの日も
頑張ろうとしてから回ったいつかも
クタクタになりながらも辿り着いた昨日も
明日になれば全部真っ白になる
意味の無い
繰り返しばかりの冴えない日々で、劇的に変わることさえも出来ない
痛みを感じれば必死に堪えて、受け入れないままに振り切ってなかったことにする
精神ではとっくに分かっているのに踏み切れない燻った日常だけれど
確かにそこに僕はいた
確かにそこに君はいた
変わったのなんてほんの一部で
後の全ては真っ白に洗い流されていくだけ、
でも、それを知りながらも生き抜いた彼や彼女らは「英雄」と呼べるんじゃないか
そんなしがなくもこの身で必死に過ごした日々を認めてくれているようで・・・
聴いてていつもグッと来てしまいます。
それでいて、


いつか
風のように
鴎のように 飛びたいよ
空 大空


まだ希望を抱く事を忘れない、捨て切れていない
いつかは自分の理想に辿り着きたいと思ってしまう人間のいじらしさ
そう・・・この曲は人自体がそのまんま歌と詞になってるので
本当に人間臭い、
リアリティもメッセージも込められた
ちょっと深読みかもしれませんが五十嵐隆流の人間賛歌のようにも思える曲で・・・。
この曲の他にもそういう曲がSyrup16gの中にはありますけど
その中でも決定打のように思える
気分が沈んだ時に聴いても沁みるし、
そうじゃない気分の時なら素直に感動できる
スケールが広くて狭い、二律背反の名曲として鳴っているな、と個人的には思える一曲です。
曲調としては静かでそこそこ地味な楽曲ですが、何度も聴けば真価は分かると思う。
ここ数年でも「Are you hollow?」と共に傾向しているバラッドですね。







頭悪いな 俺は
自意識過剰で


これも個人的にすっごく頷けるフレーズの一つ。
ある意味仕方ないんですけどね。
多分、色々と知ってしまった後だともう完璧には元には戻れない
様々な雑念を抱えながら生きていく事を余儀なくされるのが定めですけど、


死にたいようで死ねない
生きたいなんて思えない


ただ、それでも自ら幕を下ろす選択肢は絶対に選べない
死にたいような気持ちを抱えながら生きていくしか術はない
だとしたら
少しでも夢があった方が良い、
そういう気持ちを抱えたまま這いつくばって生き延びた日々は誇っても構わない
Syrup16gの楽曲の中でも明確に「その先」が提示されてる曲で
勿論それは幸福でも安心でもないけれど
ちょっとは救われた気分にもなる、
だからこそ大好きな一曲です。いつかは、思ったように自分だけの空を飛んでみたい。涙出そうになる。





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