THE NOVEMBERS「To(melt into)」全曲レビューその8「終わらない境界」です。残り1回ですね。
8.終わらない境界
タイトルだけ見ると仰々しい曲なんですけど、実際はものすごく静かな曲です。
囁くように歌う小林祐介の声と
音数の少ないゆったりしたアンサンブル
都会の喧騒を忘れて時間の流れをスロウにしたい時とかに大いに活躍しそうな曲。
まあ、それでも歌詞の方は相変わらずシビアと言えばシビアなんですけど
その分優しさも垣間見れる曲で。
素直にいい曲です。
【ところで僕ら同じ場所に暮らしてなかったっけ】
同じ場所で
同じ生活を
同じ教育を
同じものを見ていても
人間ってやつは大幅に違っていきます。
それは変化のスピードっていうものも含まれてると思うけど
ビックリする位違う人間になったり
さっきまで同じ場所に居たはずなのに、気がつけば遠くの方に行っていたり
そんなものはザラです。
そういう現実から目を背けていても、何も変わらず
例えそれが優劣的な違いでなくても
同じ場所に居たと思ってたはずの人間が、自分とは全く違う場所に居たら寂しいし戸惑うし
そんな自分は結局一人ってことにもなってしまう。
気がつけば
人間と人間の間には境界が出来ている。同じ場所に暮らして居て、も。同じものを見ていても。
【窓を閉めたところで光は漏れるし歌は聞こえるし】
そんな現実からの逃避は
許されるようで
許されない、目を背ける事も本当は出来ない。
例え違う境界に居ても
その境界の中の景色は違う境界の人間である自分の方にも届いてくる。
そんな自意識からは逃れられないし
逃れてもいけない、と思う。
境界が違ってしまったなら
人間が違ってしまったなら、その境界で目指すべき所もあるはず。
いつまでも同じ場所に留まっていたら
きっと
本当の意味での再会なんて出来ないと思うから。
【何か見たい夢
君にはあるでしょ
僕にもあるんだよ
いつか行きたい場所】
この部分が重要ですよね。
誰かとの距離だとか
自分の存在価値云々だとか、そんなものに溺れても
結局はさ
あれ食べたいなとか、見たいなとか、着たいなとか
外に出て気分変えようかなとか
こういう人間になりたいな、だとか
そんな欲求はあるでしょ
したいこともあるででしょ
そういうのないの?って。誰がどうとかではなく
自分のしたいことをしなよ
それが叶ったら会いに行きなよ、って。誰の為でもなく、誰と比べるでもなく
まずは自分のために
自分がしたいことを。その延長線上に誰かの境界が見えたなら
元ある場所から移動出来たなら
いつでも会いにいきなよ
誰かに何かを、価値を与えにいきなよ、って。何も同じ場所でなくとも
与え合う事は出来る
一緒に歩く事も出来る。境界だって悪い事ばかりではないんだ、と。それを受け入れるか
そこから先に進むかそうでないか否か。
それを決められたら、そこからの景色だって随分と違うものになるはず、だから。
個人的な解釈の話ですけど
疲れた気分の時や、ささくれだってる気持ちの時に聴くと
何かおいしいものでも食べにいきなよ、とか背中を押してくれるような。
いくら絶望したって、欲求は鳴り止まないのだから。
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