超進化アンチテーゼ

悲しい夜の向こう側へ

食戟のソーマ 3巻/附田祐斗・佐伯俊

2013-08-02 15:28:10 | 漫画(新作)
















附田祐斗・佐伯俊「食戟のソーマ」3巻読了。















この巻から好評を博し、
本誌の掲載順で初めて2番手(1番手は記念巻頭だから実質トップ)をもぎ取った合宿編です
いや、なんかこう、自分の好きなWJ作品は大体ニッチな作品が多いのでここまで人気が出ると嬉しいですね
ただ内容的にはやっぱり真っ当に面白くて、だからこそ高順位連発が素直に嬉しいんですけど。

これまでは大体創真の凄さを見せ付ける内容といいますか
彼の無双っぷりを楽しむ漫画として取り合えず序盤は構成/展開されてたと思うんですね
勿論越えるべき父親の存在とか実力を抑えていた曲者の先輩等はいたんですけど
基本的に創真は何があっても自分の実力を疑う事はなかった
それがこの巻で初登場した新キャラ兼ライバルのタクミによって考え方がちょっとずつ変わっていくんです
自分と同じ幼い頃から現場で長年切磋琢磨してきた「同業者」でもあるタクミという存在
その手さばきや創真にも劣らない持ち上げられっぷりは、ここまで割と彼一辺倒で来ていた今作にとっては
とっても新鮮でしたし、単なる噛ませにはならないであろう雰囲気とオーラがありました
事実ここで初めて同世代の相手と「引き分け」という事態に陥る訳ですが、
最初はこの学園を多少舐めて掛かっていた創真が少しずつこの学園の重みと深さを知っていく
自分以外にもしっかりとした理念とプライドを持って料理に励んでいる相手を認め一目を置いていく。
今後もこの表現を多用すると思いますが正に、
「井の中の蛙、大海を知る。」的な流れになっていくのが非常に面白くてワクワクしますね
最初はやっぱり少年読者の為に分かりやすく無双展開にしたんでしょうけど、
そこで人気を掴む段階を終えてより漫画として真っ当になっていく構成はこれはこれで正解だなあ、と
また相手が創真と同じような境遇の人物っていうのも展開に無理がなくて良いんですよね
各々のスタイルの対比だったり、
定食屋の息子だからこその発想の描写に
イタリアンで育って来たからこその創作料理の描写と
作られる料理もそのキャラだからこそ、の個性が効いてるのがまた面白いんですよね
しかも今回もやっぱり凄く旨そうで、1巻と比べると料理描写の上達具合が手に取るように分かります
王道と言えば王道なんだけど、地に足が付いた設定と展開になってるから素直に楽しめるのが利点ですね
タクミが創真をライバル視する理由付けも上手かったですし、今後もこの二人の絡みには期待しておきたい
いつか挑むであろう食戟が十二分に楽しみになる好感触のシリーズでした。

また、リアクションも意外とよく読むと地に足が付いてるんですよ
まずは「この鴨になら抱かれたい」ですが日向子さん意外と恋愛脳で驚きました(笑)。
のほほんキャラに思えてそこかしこからエロスが漂ってくるのが何とも素敵ではありますが
鴨の顔がダンディー過ぎなのもまた笑いに拍車を掛けてくれてます
「柿の種との愛に溺れてしまう」も相当斜め上の発想なのに加えて意外と表現力あるんですよね。
こっちもまた初見で大笑いしてしまった好リアクションの一つではありますけど
共通してるのは両方とも女を任せて構わないと思っている事、
要するに明確な差異は存在しないっていうのを暗に提示してると思うんですね
そういう部分も個人的にはよく考えられているなあと勝手に感心してしまいましたし、
両方ともしっかり立てて実力伯仲!というオチにしたのもお話にメリハリが出ていて良い感じです
この後の展開は更に話題になって好評だったので忘れていましたが、
タクミとの展開もまたきたるべき対決の展開に向けて素直に燃えられる流れになっていて
王道少年漫画と称されるだけの実力をまじまじと感じられた合宿序盤だったんだなと再確認。
細かい小ネタだったり、創真の普段は不敵でマイペースだけど認めるべき部分は認める格好良さなど
そういうシンプルなだけではない深みや賑やかさもまた面白さに貢献していたと思います。

また、合間の小休止的な回ではえりなとのニヤニヤ出来るやりとりがあったり
その後で彼女の実力の凄さを知る描写があったり本当に抜け目のない構成にもなってます
こうやってその後の展開に向けてワクワクを煽る描写の上手さは今のWJでもピカイチですね


さて、後半では思わぬ事態が発生しますが
個人的に凄く絶妙だな、と思ったのは変に回想だったり台詞だったりで創真の怒りを表すのではなく
田所ちゃんの健気でいじらしい涙を見せる事によって理屈でなく怒りが爆発するという
その演出の上手さ・・・がやっぱり素晴らしかったと思います
不可抗力に負けずに頑張った田所ちゃんと
そんな彼女をなんだかんだで認めているからこそ真剣に抗議した創真
ある程度筋は通っているけど、それでも理不尽さは拭えない四宮シェフとの熱いぶつかり合い。
これまで創真は友情云々で激昂することは一度もなかったように思えたんですけど
(でもさり気に丼研の部長を思い遣った発言は出てましたが)
田所ちゃんが田所ちゃんなりに一生懸命頑張ってたところを見てきたからこその創真の激昂―
って事で少年漫画的には正に100点満点の引きと熱さだったと思われます
この勢いと熱さは一切死なず逃さず持続したまま最高のクライマックスを迎えるので
単行本派の方は是非4巻をめちゃくちゃ楽しみにして欲しいですね
斯く言う私も早く単行本でまとめ読みするのが今から楽しみであります
少年誌らしいハッタリ描写と勢いよく威勢の良い不敵な主人公の格好良さ、に加えて
メリハリが付いた展開に、頑張ってるからこその感動、そして熱血的な興奮が生まれた豊かな3巻目
上手い具合に段階を踏んでヒートアップしている印象なのでこれからの展開にも期待です。
明確なライバルの出現にヒロインの為に激昂する展開等王道を真っ直ぐ貫く描写が非常に気持ち良かった
読切時の評価通りに真っ当に面白い作品になっていて個人的には満足ですね。
各々のキャラの成長もしっかり楽しめる作風にもなってるので
ただ単に無双展開を楽しむだけの物語じゃなくなってきてるのもまた嬉しいです。
佐伯俊のセンスある作画と凄味の効いたキメゴマもまたこの漫画に確かな色を付けてると思う。

それにしても田所ちゃんは本当に可愛いね!
不器用でネガティブだけど一生懸命で健気に頑張っていて
泣きながら「私の事はもういいから」と懇願するシーンはそりゃ男なら守ってあげたくなるよなあ・・・って
またその前に何気に彼女が自分ひとりでもしっかり乗り越えようと頑張るシーンがあるのもね
後の感情移入に繋がっていて抜け目ないなあって思うのですよ。
しかも創真のアシストをしっかりこなせた経験がその気持ちに繋がってる訳だし。
うん、やっぱりこの作品も縦(その場)の面白さ優先でなく横(繋がる)の面白さがある作品だなと
こうやってまとめ読みしてはっきりと思ったのでした。流れが美しいですからね。


最後に、tosh・・・いや、佐伯俊単独の読切「キミと私の恋愛相談」が収録されてるのですが
これが全く嫌味のない爽やかな恋愛ストーリーに仕上がっていてオススメです
というか、むしろtoshファンにオススメです(何
そこまでお色気路線じゃありませんけど、でも女の子の可愛さは磐石ですし
お話も自然な流れで無理がなく、また安易にライバルを嫌な女の子にしてない点も好印象
主人公の誠実さも純朴で印象に残りますし素直に傑作短編と形容してもいいんじゃないかと思われます
少年誌のラブコメ好きには是非読んで欲しい一品ですね 台詞の流れも滑らかで読みやすいので。

主人公は最初はへタレで嘘をついちゃう流れになってるんですが
後半ではへタレたままじゃなくてしっかり自分の気持ちに素直になってるのが
短い中でも成長と一途さを感じさせてくれて素敵だなあ、と思いました
それに対する女の子の反応もいちいち可愛いですし
画力が高いので素直にドキドキ出来る。何より表情の描き方が上手いですわ、抜群に。
元々本編の展開がどんどんと熱くなってるのに加えて素敵短編も収録といたれりつくせりという感触ですね
今回この作品を収録してくれた事には個人的に大きく感謝したいです。ありがとうございました。

ま、それにしても今は絵が更に上手くなってるのであれですが
この頃の絵を見るともう疑いようもなくtoshでしょう。またいつか恋愛モノの読切等も期待したいです。
おまけページにはタクミの掘り下げ話が高クオリティ作画で4ページ載ってるのでそれも是非。
色々とトピックが多くて語り甲斐のある新刊でしたね。















四宮シェフはこの巻だけの印象だと物凄い俺様キャラとして描かれてますけど
4巻ではそれだけではない一面も多々描かれるので嫌いにならないで下さいね
斯く言う私は週刊で読んでた時はもう相当印象悪かったんですが(笑 でも、結末まで読むと分かるので。

この辺のお話は本当に引きが上手くて毎週読むのが凄い楽しみだった事を思い出します
特に20~21話は週刊漫画のドライブ感に満ちていて非常に面白かったですね
週刊で読んでも最大限に楽しめる上に、
コミックで読んでもその地に足の付いた流れを楽しむ事が出来る
そういう練り込まれた構成の上手さと良さ・・・みたいなものをつくづく感じました。


最後に、卒業生の乾日向子さんのキャラが大好きです(笑)。