超進化アンチテーゼ

悲しい夜の向こう側へ

大室家 1巻/なもり

2013-08-01 20:08:19 | 漫画(新作)

















なもり「大室家」1巻読了。















うん、まあ、櫻子が主人公のスピンオフって時点で磐石だろうなあって思ってたんですけど
見事にその通りでやっぱりなもりって漫画家は今脂が乗ってるなあ、と
こうして改めて読んでいると櫻子は割と主人公に相応しいキャラクターでもあって
京子の悪ふざけはある種意図的に行われている節があるんだけども
櫻子のは本当に天然というか、考えなしに突っ走って生きてるようなイメージなので微笑ましく映るし
姉も妹もしっかりと彼女を叱ってくれるので存外に気持ち良く読む事が出来るんですね
要するに櫻子は良い意味で子供っぽいというか、他意がないというか。
そんな彼女のおてんばな行動の数々を読むのは楽しかったし
昔ながらのファミリーギャグ漫画・・・って感触で中々に手応えを感じたスピンオフでした。

ただ、個人的にあかりんや京子が出ないと若干物足りなく感じる可能性も考慮してたので
そこから考えるとその意味では予想以上に面白かったとも言える作品でしたね
「ゆるゆり」本編では楽しい学生生活、友情を描いてるけど
これは文字通り「家族」「姉妹」を描いているので読み心地も結構違う部分はあって
その新鮮さだったり家族ならではのネタが面白かったのもあって、前述の櫻子の魅力も合わせて
個人的に物凄く面白いなあって思うことが出来たのかもしれません

「ゆるゆり」に「みなみけ」のテイストを足した感じというか・・・
内容的には「ゆるゆり」とそこまで違う突飛な事をやっている訳ではないけれど
そういった若干の本編との差異が発生してるのである意味作品として独立してますし
これはこれで新しいなもりワールドの一環として楽しめる感じかなあ、と


舞台が家族/姉妹に移った事からゆる~い百合模様という本編のテーマからは結構逸脱してますけど
そんな中で長女の撫子ねーちゃんの淡い恋愛模様を入れてくるセンスは流石だなと思いました
完全にファミリーギャグになっちゃったらやっぱり物足りないと思いますからね
またそれらのネタに対する妹達の反応も面白いんですよね(笑
撫子のささやかな恋愛描写に於ける雰囲気は「ゆりゆり」を髣髴とさせる叙情感のあるものに仕上がってるので
その意味でも普段の話とは違った深みが出ていて読んでいてグッと来たし感情移入もしてしまいました。
時折挿入されるからこそ余計にニヤニヤしてしまう絶妙なバランス感覚がいいですね。

んで、そういうバランス感覚で言えばもう一つ、さり気に家族の絆というか
良い風味のエピソードもしっかり入ってるあたりも抜け目がなくメリハリが効いていて良いな、と
普段は好き勝手やってる櫻子でも妹の花子が風邪を引いた時は何気にお粥作って元気になる事を祈ってたり
彼女の真っ直ぐな部分が良い方向に振り切れているエピソードも挿入されてるのが尚素敵な部分で。
ただ単に櫻子がおてんばに振舞ってるだけ~っていう内容じゃなく
しっかりと姉妹ものだからこその優しさやいたわりを感じさせるお話も盛り込んでいる
なんで読み終えた後に結構残るものがあるのが個人的にいいなあ、と
期待通りの櫻子の面白ソロプレーも存分に楽しめて
ゆるゆりスピンオフだからこそのちょっとニヤニヤ出来る恋愛模様も楽しめる
その上で家族/姉妹ものだからこその「良い話」も堪能出来る・・・と振り返ってみるとやはり磐石
様々なタイプのエピソードが安定して時に飛びぬけたクオリティで描かれている傑作スピンオフだと思うので
本編のファンにも是非手に取ってもらいたい一作だな~と私的には素直に感じました。

また、なんだろう・・・そういう思春期・幼年期時代のやり取りが結構リアルでいいんですよね
シールの見せあいっことか、ヨーグルト食った食わないのいさかいだとか、おさがりの描写だとか
3人も子供がいると必ず1人は調子に乗って冗談言う子供がいてそれに対してツッコむ子供の存在とか
割と記号的にならずに微笑ましくなるような家族模様を描けていると思います
そういう分かりやすく笑いやすい方向性の中で確かに光っている生っぽさもまた魅力的な一冊
全編通して非常に面白くニヤニヤ出来て特に外れのない中身のように感じたので
やはりなもりさんは信頼の於ける作家さんだなあと
再確認出来た新刊にもなってました。本編と比べても全然負けてないように思えるのがお見事ですね。


そして、長女撫子三女花子の友人達のキャラクター性もまた面白いですね
花子のライバルみさきちは意地っ張りで対抗しいだけど憎めなくて可愛らしいキャラ
これから勝つだの身長の調子が悪い、等ギャグ的にも頑張ってますね(笑
撫子は友人達の中でもクールポジション・・・かと思いきや
意外といじられてたりとその辺もまた面白い
撫子は割と恋愛方面をいじられると過剰に反応するのがギャップ的にたまらないですね
そういったサブキャラ勢との絡みもまたしっかりと楽しめた地に足の付いたコメディっぷりを堪能させてもらった。
個人的にみさきちは凄くお気に入りのキャラなので本編に出しても面白いかも・・・って思いました。
新キャラ勢に関しても楽しめる辺りもまた本格的に新作っぽくて良かったのかもしれません。
こっちもまた、オススメですって事で。










で、初回版には花子の夏休みの絵日記も付いてるんですがこれがまた面白いですね(笑
本当に夏休みが始まって終わるまでしっかりと記されている上にエピソードの一つ一つが面白く
子供視点ならではのシュールさと良い意味での幼さがよく出ていてお気に入りです
7月21日のスカート摩擦の日記と
8月2日の名前に騙されました日記と
その翌日のみさきちとの会話、8月12日のいかにも子供っぽい日記とかが好きで
中でも8月16日の日記は大人向けのシュールな笑いになってて一番好きですね(笑)。
そして夏休みの宿題を何気に7月中に終わらせてるあたりもまた花子らしくて良かったです
割とどの日を読んでもほっこり出来たりある意味シュールだったりするので個人的には初回版推しかな。
みさきちはここでも強烈なキャラ性を発揮していて、やっぱポテンシャル高え!と(笑)。

スピンオフ作品ですが、本編と同等と言ってもいいくらいしっかりした作品になっていました。
櫻子の可愛さや面白さは主人公に出来るくらい優れたものだった、というのがこれ読んでるとよく分かります。
正直櫻子ファンになりそうなくらい無邪気で無添加で可愛いって思ってしまいました。
続巻も出るようなので今から2巻を読むのも楽しみです。