この作品はもう既に過去、リアルタイムで触れてますけど
最近よく聴いてるので、ここでもう一度触れてみたいと思います。少し間を空けての旧譜レビュー、
今回はLOST IN TIME「明日が聞こえる」です。
個人的に最新作をかなり絶賛してた覚えがあるんですけど、
それこそ最高傑作っていうくらいに。
でも、そうは言いつつその前作にあたるこの作品も凄く好きなんです。「ロスト アンド ファウンド」も勝負作
これもまた勝負作だとは思うんですけど
多分熱量の入れ方が違うっていうか、あっちは本気度もメロディーラインの洗練度も相当高くて
正に傑作!ってイメージなんですけど、こっちの場合はもっとナチュラルっていうか
ある意味ではありのまま
両方それまでの「経験」が大きく沁み込んだアルバムになってるのは間違いないんですけど
何かにショックを受けたとして「ロスト~」はそこから必死に考えてる作品で、
この「明日が聞こえる」はその全てを静かに受け入れてる作品っていうか。
性質は同じだと思うんですけど
表現の仕方は結構違うように思える、そんな歌い手の「これまで」が沁み込んだアルバムです。
きっとLOST IN TIMEの音楽って年を取れば取るほど、経験を積めば積むほど
失敗を繰り返せば繰り返すほどダイレクトに来る音楽だと思うから
その意味ではますます沁みるバンドになっていくんじゃないかな・・・って個人的には思ってます。
最近は明らかに年月を重ねた事による軋みとか諦めが如実に出てる気がして
だからこそより一層彼らの曲にのめり込んでしまいます。
聴き手である私も確実に年は重ねてる訳ですから。
【ガキの頃夢見た野球選手はもういない 平凡なまんま進む 何となく分かっていた】 (鳥)
この曲は自分には空を大きく飛べる翼(才能)なんてないから
その代わりしっかりと前を見て歩いていこう、って歌なんですけど
誰にでも諦めなければいけない時って来るもんで
認めなければならない自分自身もあるわけで
このアルバムはそこから逃げずに、ありのままの自分を受け入れて、受け入れつつも
心の底ではまだどっか抗いたい気持ちを抑えつつ、っていう
馬鹿みたいに明るくはないけれど
でも何もかもを認めてない訳でもないっていう
中立の立場の作品にはなってると思っていて、そこがまた個人的に好きなポイントなんですが。
【洗いざらいは言わない 秘密はきっといつまでも秘密さ】 (ブルーバード)
このアルバムを聴いてると一人の人間が歩いてきた過程とか
そこに沁み込むペーソスだとか
そういうものが如実に表現されてるから特に好きなんですけど
詞だけでは表現できない
その裏の感情まで色々と表現されてるような気もして
中でも上記のフレーズはよりその感覚が強くて個人的にはお気に入りの楽曲になってます。
この曲は冒頭のキーボードの音色だけでグッと感情揺さぶられるから困ってしまう。
【飛行機が堕ちる夢をいつも見るんだ そこに僕は乗っていない 眺めてるだけ】 (静かな警報)
日常生活でもなんでもそうですけど
当事者になろうとしても
当事者にはなりきれない
そもそもなろうともしてないのかも
忙しさを理由にして努力も何も忘れているのかも、だとか
鈍感になっていく事への反骨精神もこのアルバムには込められてる気がします。
ドラマチックなアンサンブルが胸を打つ「8月7日の夕焼けを君は見たか」も含めて
そういった静かなる刺激にも満ちた作品、とも言えると思います。
3曲使ってアルバムの個人的な印象を語りましたけど
本当はどの曲も大好きで
全曲語りたいくらいなんですけど
それをやると全体像のレビューにはならなくなってしまうんですが
「希望」のエネルギッシュなメロディーラインも、「トライアングル」の解放感に満ち溢れた歌声、
「忘れもの」「あじさい」の感傷的なツボを煽る詞とメロディ
「ハローイエロー」の「不安がない事が何よりも不安」って歌詞もグッと来る部分だし
「合い言葉」なんて普段自分が考えてる事そのまんま
何かを伝えたいって想いそのまんまで。
とにかく一曲一曲の出来が良いアルバムなのは間違いないと思うんですが
その上でナチュラルな質感だったり、ありのままを認める潔さだったり、歳を重ねたからこそ理解できる感情
でもそこで終わる気なんて実はないっていうのも頼もしいし
実直に希望になりえる音楽だとも思います。
気軽に聴けるようで、実は考えるべき部分が沢山あるっていうのがこのアルバムの肝でしょうか。
じっくりと作られたであろう珠玉の11曲で埋め尽くされた
海北大輔の本領発揮とも言える傑作アルバム。
今聴くと
本当に傑作だったんだなって直に思えます。当時も当時で好きでしたけど。
何気にアレンジも一つ一つ違ってるのでその意味でも聴いてて楽しいアルバムです。
【忘れないよ 大丈夫 大切なものはまだ握りしめている
それはいつか 君がくれたって事】 (キャラバン)
個人的に別れの歌である「ブルーバード」の次にこの曲が来るって配置が凄く好きなんですね。
確かにさよならって自分の中で断ち切ってはいるけど
それでも何かの糧にはなっている、という。
そんな意図が込められてるかどうかは分かりませんけど、この曲もまたとても好きな曲。
沁みる曲ばっかのアルバムなんです。
私にとって。
さぁ、旅を始めよう
http://blog.goo.ne.jp/nijigen-complex/e/c884594afdb65b60da05fcb37c3a1da3
ロスト アンド ファウンド
http://blog.goo.ne.jp/nijigen-complex/e/dc72d792fdd4521943510de44571dc62
いずれ初期の3作についても、また。
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