いのしし くん。

政治、経済から音楽全般の評論
ultimate one in the cos-mos

万引き家族、 shoplifting family

2018-06-11 19:51:51 | 日記
 (1)是枝裕和監督作品の「万引き家族」が先月のカンヌ映画祭で最高賞の「パルムドール」を受賞した。米国のオスカー賞は米国映画中心で外国作品が注目を集めることはほとんどないが、フランス・カンヌ映画祭は外国作品にも陽を当ててこれまでも日本映画作品に高い評価が聞かれてきた。

 映画でも米国第一主義を貫くハリウッドに対して、ヨーロッパは独自の文化芸術論で米国に対する対抗心は根強い。

 (2)フランス、イタリア、ポーランドなどヨーロッパ映画には社会派といわれる名監督作品も多く、心を揺さぶられる印象的な表現、映像も多く、心に残る作品としては制作スケール、名優群のハリウッドものよりはモノクロ映像の石畳や労働者の生活描写による現実社会観に訴える作品群が強く印象深い。

 (3)是枝監督の「万引き家族」は現実に起きた母死亡後もその家族が母の年金を受け取り生活していた社会問題をモチーフにしたと監督が解説しており、米国モノクロ映画(企画構成上あえてモノクロ映像にした)の「ペーパームーン」を想起させる無慈悲な家族関係、社会とのつながりの不条理性(unreasonableness)を描いたものと考えるが、「万引き家族」の映画を見ていないのでその感想はここでは置いておくとして、是枝監督の言動が注目されている。

 (4)国内外での活躍者に対しては政府は積極的に表彰という形で評価している。特に世界を舞台にして日本人活躍ということになればインパクトも強く、政府としても高い評価で応える。

 どうしても世界での文化、スポーツでの活躍に対して政治が積極的に取り上げるということになると、世界的話題だけですでに国民関心が高く、十分知れわたりインパクトも強い中で政府が表彰するというのも当然のことではあるが、政治的意図、人気とりに利用される心配事はいつも背景にある。

 (5)是枝監督は「映画がかって『国益』や『国策』と一体化し、大きな不幸を招いた過去の反省に立つならば、公権力とは潔く距離を保つというのが正しい振る舞いなのではないか」(自身のホームページ報道)との信念のもとに、今回の受賞での自治体などからの表彰、顕彰の申し出を全て断わって、林文科相が文科省に招いて祝意を伝える考えを示したことに対して、自身のホームページで同上の趣旨から辞退を表明している。

 (6)映画作品の評価、映画監督の評価はそれを観たあるいは観たいとする各地の国民、市民が判断するものであり、同上の映画の置かれた過去の歴史的立場とはまた別にしても政治、政府により「誠に喜ばしく誇らしい」(林大臣国会答弁)ものとしてただ賞賛、表彰されるものとは考えられない自立した文化、芸術論だ。

 (7)是枝監督としては生活保護者、家族が250万人を超えて増え続ける日本社会の中でそれでも家族が寄り添って生活、生きる格差社会に正当に目を向けない政治、政府へのアンチテーゼ(antithesis)もあるのだろう。

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