いのしし くん。

政治、経済から音楽全般の評論
ultimate one in the cos-mos

犯罪者の社会復帰ー理想と現実。 social return of criminal , ideal and actuality

2017-03-25 20:15:07 | 日記
 (1)元大学生が人を殺害することに異常な関心を持って高年令女性を殺害し、かって中学と高校時代にも同級生に劇物を飲ませたことなどのいくつもの犯罪が次々とあきらかとなった裁判で、名古屋地裁はこの元大学生被告に無期懲役の判決を言い渡した。

 裁判はこの元大学生被告に精神障害、発達障害があるとして、刑事罰の「責任能力」(responsible ability)があるのかが争われた。

 (2)名古屋地裁は元大学生被告の事件当時の計画性、用意周到性から善悪の判断ができたとして「責任能力」があるとして無期懲役を言い渡した。
 しかし、元大学生被告は報道によると今でも週に2回は人を殺害したいと思うことがあると言っており、自分の心理状態を制御できない異常性、障害性をのぞかせている。

 (3)判決は無期懲役だが、裁判長は裁判員からのメッセージとして「判決は厳しいものになったが、いずれ社会に戻れると信じてしっかり更生してほしい」(報道)を伝え、「まだ若いので更生してほしい。必ずできると信じています」(同)と諭した。

 判決は「年令や精神障害の影響を踏まえても有期刑では軽すぎる」(同)として無期懲役刑なのに、一方で「まだ若いので更生してほしい」(同)という二律背反のよくわからない裁判判決だ。

 (4)実は判決の中で「仮釈放の弾力的な運用で比較的早期の社会復帰が図られることが適切」(判決報道)との異例の付言があった。被害者、家族に対する無念への配慮、事件の異常重大性がひとつは無期懲役となり、一方で現在の元大学生被告の精神障害、発達障害性の治療回復、将来性を考慮した二律背反同在の判決になった。

 (5)もとより日本の刑法は報復主義をとらないので、犯罪者の社会復帰(social return)、更生に主眼、軸足を置いて、被告に有利な司法裁判といえる。
 今でも週に2回は人を殺害したいと思うことがあると言う犯罪者の「比較的早期の社会復帰が適切」というのはどう理解していいのかは、まだわからない。

 近年は更生したと仮釈放されて、その後短期間のうちに再び重大事件を起こす再犯率の高さも社会問題化している。
 
 (6)裁判の高邁(まい)な精神性、文化性とそれに必ずしも応えていない服役中の治療、更生指導の相反するギャップを埋める司法体制改善が必要だ。
 高邁な理想(ideal)を現実(actuality)に近づけるための努力、工夫が司法裁判には求められる。そうでなければ被害者家族、社会からは理解されないだろう。

 (7)今回の事件は犯罪者の精神障害、発達障害性が問題となって、家庭、家族、学校、社会のそれぞれの段階での関与、関係が問われた事件でもあり、犯罪者の「責任能力」だけでなくそれぞれの段階での関与、関係の背景事情についても解明が必要だ。

 それがこのような異常事件の抑制、防止につながるものだ。

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