うろ覚えライフ。

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蟹工船

2008年06月06日 | 時事社会ログ

○「蟹工船」東海でもブーム 低賃金で過酷労働する男たち描く

 

         貧しい人々の過酷な労働と団結を描いたプロレタリア文学「蟹工船(かにこうせん)」がブームだ。没後75年の小林多喜二(1903-33年)の代表作で、東海地区でも火がつき、先週あたりから各店の売り上げ上位に登場。昭和初期の作品としては異例で、格差社会を背景に、“ワーキングプア”のリアルな闘争が若者をはじめ幅広い関心を集めているようだ。

 「この1カ月で1000冊近く売れた。爆発的です」。三省堂書店名古屋高島屋店(名古屋市中村区)の担当者は新潮文庫「蟹工船・党生活者」の勢いに驚く。

 北の海で低賃金の男たちが搾取に耐えながらカニ漁に従事し、階級闘争に目覚める名作。同店は「他店で人気が出ている」と意外な話を聞き、今年4月ごろ平積みを始めた。

○「蟹工船」再脚光…格差嘆き若者共感、増刷で売り上げ5倍

 

         プロレタリア文学を代表する小林多喜二(1903~1933)の「蟹工船(かにこうせん)・党生活者」(新潮文庫)が、今年に入って“古典”としては異例の2万7000部を増刷、例年の5倍の勢いで売れている。

 過酷な労働の現場を描く昭和初期の名作が、「ワーキングプア」が社会問題となる平成の若者を中心に読まれている。

 「蟹工船」は世界大恐慌のきっかけとなったニューヨーク株式市場の大暴落「暗黒の木曜日」が起きた1929年(昭和4年)に発表された小説。オホーツク海でカニをとり、缶詰に加工する船を舞台に、非人間的な労働を強いられる人々の暗たんたる生活と闘争をリアルに描いている。

 文庫は1953年に初版が刊行され、今年に入って110万部を突破。丸善丸の内本店など大手書店では「現代の『ワーキングプア』にも重なる過酷な労働環境を描いた名作が平成の『格差社会』に大復活!!」などと書かれた店頭広告を立て、平積みしている。

 「蟹工船」と聞くと、僕は筒井康隆さんの「蟹甲癬」を思い出してしまう。全く違う話だが、僕は小林多喜二の日本プロレタリア文学の名作、「蟹工船」は読んでいなく、筒井康隆のギャグSF、「蟹甲癬」は読んでいるからだ。

 筒井康隆さんのSF短編「蟹甲癬」のタイトルは、勿論、「蟹工船」のパロディーだろうが、お話の内容は確か、未来の宇宙から飛来したウイルスか何かの病原菌で、顔の頬の部分が四角く蟹の甲羅のように固くなり、中に膿が溜まる流行病だ。

 まあ、もっと詳しく言うと、宇宙カビみたいな病原体が寄生して人間の脳味噌を食べ、患部となる顔面の頬を乾癬状に固くして、その内部に、病原カビの脳味噌を食べた後の排泄物がカニミソ状に溜まる。頬の甲羅はパカンと外れ、中身のカニミソ状の排泄物はとても美味しい。美味しいので他の人が食べると、食べた人は感染し蟹甲癬を発症する。未知の寄生病原体の伝染病を扱ったSFですね。多分、そういうお話だった。

 僕は昔は、青年の頃だが、筒井康隆さんのSF短編はいっぱい読んだ。当時、各出版社から文庫で出てる短編集は、全編読んだのではないかというくらいの勢いで。長編はあんまり読んでいない。長編推理小説は読んだけど、筒井康隆先生の文学実験小説は難解で読んでいない。筒井ギャグSFはメチャクチャ面白くて爆笑して愛読したが、読後にじわりと毒が回って来てちょっと嫌な感じが残る。何か後味の悪さの毒がある。そこが文学者・筒井康隆の天才たる所以だったのだけど。

 筒井康隆さんの著作の話ではないのだ。本家、歴史的文学名作、「蟹工船」の話だ。僕が中学一年か二年の時の、定年間近い教頭先生が社会科を兼任していて、授業のときに、先生が少年時代にまだ戦時中で、発禁本の「蟹工船」を隠れて読んだ話をしていたのを思い出す。

 僕は、17、18歳くらいの頃、左翼思想かぶれしそうになったのだが、元々、アタマの悪い少年だったので、そこまでは行かなかった。だから、ハイティーンの時代は、この小説に大変興味はあった。けど、結局読まず終いだった。何だか暗くて重苦しく、耐えられないような気もしたからだ。

 いわゆる昔のタコ部屋の世界ですね。虐待的に搾取される地獄の重労働世界で、最後は労働者たちが蜂起して、支配体制に立ち向かう。

 僕が幼少時、訳解らずに単純に忍者漫画として、貸本屋から借りて来て見ていて、後に、十代末に読み直しで愛読する、「忍者武芸帳」とちょっと、プロパガンダ的に似ていますね。

 現代のひどい格差社会のもとで、低所得層として毎日食べて生活して行くのがやっとのような、下層庶民たちが増加する中、比較的若くてワーキングプア状態に居て抜け出せない人たちが、希望も持てず灰色な気持ちで、昔のプロレタリア文学の名作、「蟹工船」を読んでみているのかも知れない。でも読むとまた、気持ち的に絶望的になるんじゃないかなあ。そこから物語の労働者たちのように、体制に向かって抵抗運動をしようなんて気持ちが起こるだろうか。

 現在、老人たちは、後期高齢者医療制度に反対して厚生労働省の建物の前で座り込みという、まあ、抵抗運動をやってますけど。

 諸外国では燃料高騰に対してトラック運転手等労働者たちが、デモなど抗議行動を起こしてますねえ。日本人はおとなしいからなあ。先ず、暴動なんて起こさないものなあ。

 現代の若者は貯金をよくやっている、と言いますものねえ。将来にあまり希望が持てず先行きが不安で 、贅沢な買い物などはせずに金の掛かる遊びはせずに、若い時分からお金が余れば貯蓄に励むらしい。その貯蓄も銀行は降ろす度に、手数料と称して二百円くらいの金を巻き上げる訳だが。変な話だなあ、貯金は自分の金の筈なのに。

 もっとひどい時代があったんだ、と若者たちは、「蟹工船」を読んで自分を慰めているのだろうか。「蟹工船」が若者たちに愛読されるというのは、明らかに暗い時代ですよねえ。

 ちなみに、知らなかったのだけど、蟹工船は『航船』ではないので、動かないんだそうですね。遠洋に漁に出る船ではなくて、港に繋がれていて、定位置でひたすら蟹漁を行い、あるいは持ち込まれた蟹を、休むことなく、これは労働者たちも休むことなく、加工作業を強制労働させられる工場船なんですね。

 僕も「蟹工船」に興味が出て来たなあ。読んでみようかなあ。でも読んだら暗澹たる気持ちになりそうで嫌だなあ。


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