旅限無(りょげむ)

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やっと辞めます菅総理 其の六

2011-08-30 15:24:47 | 政治
■原発事故から5箇月も経って、福島圏内の子供たちが内部被曝していました、などと重大な事を発表する菅アルイミ内閣には危機管理能力はまったく有りません。自分は頑張っているのに国民に分かって貰えないなどという泣き言は誰も聞いてくれませんし、原発事故から1週間は眠れなかったなどと苦労話を披露しても、何でも自分がしゃしゃり出て事態を悪化させるくらいなら担当部署に任せて最後の責任を取る時までは枕を高くして眠っていた方が良かっただろうと皮肉を言われるのが関の山。大震災と原発事故、復興は進まず電力不足がエネルギー危機を呼び、そこに円高が襲い掛かって日本の将来は真っ暗だ!と国民は不安を募らせているというのに、「子供手当て」だどうしたこうした、次の民主党代表は誰にしようか?等々、国民にとってはどうでもよい事で国会が動かない。

■「犬死はしない」などと犬に対して失礼だ!と愛犬家に叱られるような遠吠えをしていた菅アルイミ首相も、脱原発と再生可能エネルギーで支持率が上向くかと淡い夢を見ていたものの、就任以来の無能無策ぶりに愛想を尽かした国民の心は遠く離れて戻っては来ませんでした。市民運動家出身というのも単なる看板でしかなかったことが、大震災と原発事故の対応ぶりが証明してしまいました。本来ならば痒い所に手が届く「さすがは菅さんだ」と被災者の皆さんが涙を流して感動・感謝する現場感覚にぴたりと適合した施策が連発されるはずが、初期対応の初動で躓いてから手持ちの情報を隠蔽し続けた上に事故直後のデータ収集を怠り、責任の所在と指示命令系統を混乱させるだけの本部濫立を命じる一方で訳の分からない記者会見を官房長官に続けさ、自分が引き起こした国会のネジレ現象に手足を縛られて大連立だのマニフェストの見直しだのと復旧・復興に逆行する事ばかりに精力を注がざるを得なくなり、自分の存在自体が最大の風評被害だとまで言われるようになったら、唐突に脱原発!再生可能エネルギー!を持ち出してまるで原発事故が収束したかのように不気味な前のめり政治に突き進む姿は墓場をうろつくゾンビそのものでありました。

■民主党の代表選挙も日程が決まり、どうやら2日間で政策論争を終わらせて投票をすることになるのだそうですが、急いでやるべきことは先送りで時間を掛けねばならぬことは拙速。何をやらせてもチグハグな民主党という集団は何処までも素人集団のようですなあ。


細野豪志原発事故担当相がまとめた試案は、菅直人首相の意向に沿って、経済産業省と原子力安全・保安院の「分離ありき」が優先した。地球温暖化のため原発を推進してきた環境省の外局として「原子力安全庁」(仮称)を新設するなど課題を多く抱えている。…… 

■原発の安全基準の見直しよりも先に東京電力を税金を使って救済する仕組みを作った菅アルイミ内閣が新しい原発監視組織を作ったところで経産省の官僚が番人を務める原子力ムラは微動だにしないでしょう。


首相は東京電力福島第1原発事故の発生以来、原子力を規制する立場にある原子力安全・保安院が規制に消極的だと強い不満を持っていた。5月18日の記者会見では「原子力を進めている資源エネルギー庁とチェックする保安院が、ともに経産省にある原子力行政のあり方を根本的に見直さないといけない」と述べた。…… 

■昔の橋本行革で役所の頭数だけ減らした皺寄せで原子力ムラはそれ以前よりも強固で濃密な組織になったと言われていますから、政権交代用マニフェストで原子力行政の改革を少しでも言及しておけば良かったものを、原発事故が起こるまで民主党政権は地球温暖化ガスを削減する切り札として原発を高く評価して新設計画まで進めていたのでしたなあ。菅アルイミ首相もベトナムに原発プラントを売り付けて得意満面でした。福島第一原発の大事故によって「考えが変わった」と個人的な感想を述べていますが、一国の総理大臣として何がどう変わったのか、歴史的な名演説で聴かせて欲しかったのですが……。


細野試案は、保安院のほか、内閣府にある原子力安全委員会や文部科学省の関係部局も一つの組織に統合させた。「脱原子力依存」を掲げ、原発推進より規制に重点を置きたいとする首相の強い意向を反映させた内容にもなり、巨大な規制官庁が誕生することにもなる。「安全庁」が環境省の監督下になることで、安全規制と原発事故発生の初動対応が一元化されるというメリットはある。だが、経産省内からは「原子力行政が、菅首相の一言だけで簡単に変えられるものか」(幹部)との批判も出ている。さらに環境省はこれまで原子力行政には直接的には関与してこなかったため、実効性を疑問視する声もある。…… 

■マニフェストの目玉だった「国家戦略局」も看板倒れで終わってしまった民主党に新しい組織の立ち上げと運営など無理に決まっています。その証拠に経産省の原発行政トップ三人組は更迭ではなく「人心一新」の順送り人事でお手盛り辞任を自らの意思で取り仕切って菅アルイミ首相の面子は丸潰れになっておりますし、経産省や文科省などの所管部署が激しく抵抗しているという話も出ていませんから、官僚の目から見て何も変わらないことが分かっているのでしょうなあ。


民主党の政務三役経験者は「行政改革全体の中で議論すべき内容だ。規制部分だけ急にまとめても意味がない」と問題視する。輿石東参院議員会長も「急ぐべきはそういうことではない。新しい(政権の)体制に入ることが最優先すべき問題だ」と指摘したように、退陣表明した菅首相の都合だけで原子力行政の組織改編が進むのは避けなければならない。
2011年8月3日 産経ニュース 

■こんな重大な政治課題でも菅降ろしにネタに使われるようでは民主党はいよいよ終わりです。菅アルイミ首相は業績の破片でも歴史に残そうと必死なのでしょうが、鼬の最後っ屁みたいに迷惑な置き土産を慌てて作ったりすると後で官僚たちが好き放題に悪用する可能性がありますから、行政組織の切り張りは余程の知恵と経験が無い者がやっては行けない危険な仕事なのですが、自信過剰の病気が治らない菅アルイミ首相の唯我独尊姿勢は誰にも治せないようです。かと言って菅アルイミ首相の暴走を押し留める気概と力のある政治家が民主党内には皆無だというのも困ったことであります。


細野豪志原発事故担当相は5日、東京電力福島第1原発事故を受けた原子力規制行政の見直しに関する試案を正式発表した。経済産業省から原子力安全・保安院を分離し、内閣府の原子力安全委員会などと統合し「原子力安全庁」(仮称)を新設をする。平成24年4月の発足を目指す。安全庁の所管府省は環境省と内閣府の両論併記とした。環境省の場合は環境相の所管とする。内閣府の場合は担当相を配置するため内閣法を改正して閣僚枠を増やす必要がある。閣僚間では内閣府を主張する意見が多いという。 

■何かと言うと辞任するまでは「責任を果たす」と繰り返していた菅アルイミ首相は、何の根拠もなしに後継内閣が自分の名前と業績を後生大事にして継承してくれると素朴に信じているとは思えません。いくつもの問題を秘めていると今から危惧されている自然再生エネルギー法案を強引に成立させて、脱原発依存の端緒として最終的には脱原発を達成する未来を見通して自分が突破口を開いたのだ!といつまでもエネルギー行政の権威として政界の何処かに居座ろうとでも考えているとしか思えません。与野党共に菅降ろしの一点でのみ「大連立」は実質的に成立したようなもので、似たような名前の法案を準備していたこともあって野党第一党の自民党も極僅かな修正を要求しただけで法案に賛成するようですが、決定的な情報が隠蔽されたまま原発事故の真相は不明で、安全基準の見直しも未着手、事故収束の「一定のメド」などまったく立たないまま、今頃になって事故現場周辺の土地には人が住めないと公式に発表するという乱暴で拙速な政治手法で原子力行政の見直しなどが出来るのでしょうか?この8月5日の段階では新しい監督機関の所属先は両論併記でありました。


また、第三者的な立場から助言や意見を言う「原子力安全審議会」(仮称)を設置。安全庁はデータ公表の遅れが問題になった緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)など環境モニタリングに関する司令塔機能も担う。当面の組織規模は500~600人の見込み。政府は来週にも閣議決定。組織改編に必要な法案は来年の通常国会に提出する。また、原子力政策の転換や原発事故の検証、人材育成など中長期的な課題を踏まえた第2段の見直し案を24年末をめどにまとめる。
2011年8月5日 産経ニュース 

■「24年の末」に民主党という政党が消滅している可能性が高く、SPEEDIの取り扱いに関して重大な過失があったことを素直に認めようとさえしない菅アルイミ内閣が、とうとう事故から現在に至るも作れなかった「司令塔」をハリボテながら形だけは作って自分の業績として誇りたいだけなら虚しいばかりでありますなあ。

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